「震災がれき」騒動に乗じて、被災地に運び込まれている怪しいモノ窪田順生の時事日想(1/3 ページ)

» 2012年10月09日 08時01分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 岩手県の「震災がれき」の搬出が開始され、各地の自治体や市民の動きを伝えるニュースが増えてきた。

 個人的には、放射性物質の問題はどこまでいっても平行線だと思っている。以前、チェルノブイリでも調査に加わったことがある権威に、内部被ばくが人体にどのような影響が出るのかについてネチネチと尋ねてみたことがある。パワーポイントの資料などで疫学データを示されたが、最終的に言ったのが、「今の医学ではよく分からない」――だった。

 人体実験をしたことがあるわけでもなし、似たような事故が過去にあったわけでもない。チェルノブイリや広島、長崎のデータを参考にして、ああだこうだと思いを馳せるしかない。だから、「分からないから心配すべきだ」という学者と、「分からないからそんなに騒ぐことじゃない」という学者が互いをけなし合うという不毛なことになる。

 専門家ですらこんな有様なのだから、自治体同士で折り合いなどつくわけがない。

 かくして、「震災がれき」を巡って、新たな「差別と利権」が生み出されることになるというわけだ。

 こういうキャッチーな問題にメディアの目が向いている時というのは、似たような産業に携わっている人間からするとありがたいことこのうえない。

 「がれき」がどこへ動いた、どこの市が断った、と騒いでいるどさくさに紛れて、平時では後ろ指をさされそうな懸念事項をサクサクと押しすすめることができるからだ。

 そのひとつが、「鉄鋼スラグ」だ。

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