自己分析をする就活生に見込みはない就職は3秒で決まる。(2/3 ページ)

» 2012年10月26日 11時00分 公開
[荒木亨二(荒木News Consulting),Business Media 誠]

なぜ新聞を読み比べなければいけないのか――「5紙・定点観測法」

 分からない「自分」をアテにするのは愚かなこと。それよりも、分かることから先に正しく理解する方が、賢い選択と言えよう。働くとは「経済」に参加すること。ならば、まずは経済を十分に分析すべき。そのためには、正しく情報を掴むチカラを鍛えなければならない。それに最適なツールが新聞。

 朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、産経新聞、日経新聞の5紙を読み比べる。いわば新聞の「定点観測」を行う。朝日と日経の2紙を読むことが就活の常識となっているが、新聞各紙はそれぞれに特性があるので、最低でもこの5紙に目を通さないと、経済の実態は掴めない。

 5紙を読み比べる目的は、情報リテラシーを鍛えること。同じ記事でも各紙の論調は変わり、さすれば情報の中身も異なる。とある自動車メーカーのエコカー増産を伝える記事があったとしよう。これを朝日は「環境面のメリット」から報道し、日経は「地元の雇用促進」に与える影響を論じた。

 一方で読売は、クルマ以外でも環境意識が根付いているデータを引き合いにして、「消費トレンド」という特集記事にまとめた。複数の新聞を比較すると、このように1つの記事から様々な側面が浮かび上がるため、より広く深く、経済を知ることができる。

“関心のない情報”をどうやってインプットするのか

 ところで、なぜ新聞に限定するのか。それは自分の“関心のない情報”をインプットするため。実際に紙面を広げて読む新聞は、関心のない情報まで自然と目に飛び込んでくるだろう。実はこうしたいらない情報こそ、経済を知るうえで欠かせない。

 例えば先のエコカー増産の記事。これは「自動車業界」だけでなく、そこに商品を供給する「化学業界」「繊維業界」「電機業界」など、多くの業界・企業が関与する話題。同時に、エコカーを推奨する「法律」、その影響からガソリンの需要減少にあえぐ「石油業界」のことも知っておかねばならない。

 このように、1つの情報には必ず原因と結果があり、見えないところで広範な業界、企業に影響を及ぼしている。これが「経済」というもの。関心のない情報までインプットすれば、気付かなかった知見が得られ、そこから関心はアメーバのように広がっていく。ネットのニュースだと、自分の気になる情報のみをクリックして終わり。視野は広がらず情報にも深みが生まれない。

 新聞5紙の読み比べ。これを半年も続ければ、情報リテラシーは目覚ましく発達し、経済がぐっと身近になるだけでなく、企業を観察する洞察力も養われる。もちろんそれが、企業や仕事選びの強力な武器になることは間違いない。そんな面倒なことはできないと諦める前に、少し考えてほしい。仕事はこれから40年も続く、壮大で地道な作業。それに比べれば、新聞を読む半年なんて短いものだ。

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