出すのも売るのも甘くない――非コミュプログラマーのビジネス本出版裏話Google副社長の発言が(前編)(1/3 ページ)

» 2012年11月08日 11時00分 公開
[村上福之(クレイジーワークス),エンジニアtype]
エンジニアType

著者プロフィール:

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村上 福之(むらかみ・ふくゆき)

 株式会社クレイジーワークス 代表取締役 総裁

家電メーカー系エンジニアでプリンタやSDカード関連の開発に従事。ケータイのアプリやサイト、電子書籍のシステムなどに詳しい。空気を読まない発言で、ネットの住民の注目を集めている。人づきあいが苦手。最近、断食にはまる。

誠ブログ:村上福之の誠にデジタルな話

オルタナティブブログ:村上福之の「ネットとケータイと俺様」


book 『ソーシャルもうええねん』(Nanaブックス)

 『ソーシャルもうええねん』という僕の初めての本が出版されました。

 いろいろ苦労しました。最近、僕がブログで宣伝しているので、気になった人もいるかもしれません。正直、僕も、ここまで告知活動をしないといけない状況になるとは思いませんでしたし、ウザいと思われたこともしばしばです。

 ここ3カ月、僕は出版業界に首まで漬かっていました。普通の著者ではない本の作り方をしていたと思います。

 最初、この本の企画そのものは、今年5月ごろ、フリー編集者の岡本さんという方からメールでいただきました。「本を出しませんか?」と来たわけです。それで実際にお会いしてみると、どうも岡本さんは僕のブログを非常に読み込んでいただいていて、本を出したいという強い思いがあったようです。

 「村上さんのブログ、何か、書いている単語の意味はよく分からないですけど、面白いです!」

と言っていただけて非常にうれしかった記憶があります。今までにも、本を出したいというオファーはあったのですが、ここまで僕のブログを読んでいただいている方がいなかったように思います。しかし岡本さんの中にはすでに企画があり、僕のブログのまとめ本を出したいという構想でした。

プログラマーネタ満載のビジネス本に対する違和感

Nanaブックスの編集担当者から来た最初の提案

 最初の企画書がこんなのでした。

 出版社はNanaブックスという名前でした。以前、『情報は1冊のノートにまとめなさい』という本などを出した出版社と聞いていたので、ヒットのノウハウがあるのだろうと思ってました(当時は)。

 そして、いそいそとNanaブックスさんにお伺いして、出版の打ち合わせをしました。

 最初の企画は、「NULL(ナル)で出す勇気」。なぜか、NULLにナルとルビがふってありました。

 僕のブログをけっこう読み込んでいただいているので、非常に驚いたと同時にうれしかったのですが、まったくしっくりきませんでした。

 僕のようにプログラミングをしていて、独立を目指す人には良いと思ったのですが、それ以外の人にはどうなんだといって、再度企画を練りましょうと言って、その日の打ち合わせを後にしました。

 おそらく、以前、エンジニアtypeで話題になった「非コミュプログラマーが独立するのに必要なたった2つの勇気」から取ったものと思いました。

 しかし、普通のビジネス本にしてはこのタイトルは分かりにくいですし、どうもしっくりこなかった上に、昔書いたブログを出すのもどうもタイムリーではないと思い、「本は出したいけど、どうなんだろ?」と思いました。何より、「NULL」なんてタイトルのビジネス本ってどうなんだ、取り上げたブログのタイトルも一般的なのかどうかと言われると、非常に微妙でした。

 その後、僕の方は何となく台湾に行ったり福岡に行ったり、韓国に行ったりGoogle I/Oで米国に行ってしまったりで、まったく出版の話が進みませんでした。Nanaブックス社内の進ちょく報告会議も「村上さんが台湾に行きました」、「村上さんが韓国に行きました」、「村上さんがアメリカに行きました」という、グダグダな社内報告が1カ月以上続いたそうです。よくも企画がなくならなかったものだと思います。

 日本で心配する岡本さんを放置して、僕はサンフランシスコのMoscone Centerという大きな会場で、Google I/Oのキーノートスピーチを聞いていました。

 Googleの副社長がダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラと、Google+の新機能について説明し続けてうんざりしていました。正直、僕はFacebookとTwitterばっかりでGoogle+を使っていなかったし、そんな話よりもAndroidについての話をもっと聞きたかったからです。

 Google副社長が壇上で「ソーシャル、ソーシャル」と言い続けるので、「ソーシャル、もうええねん」とTwitterでつぶやいたのを、日本にいる岡本さんが見つけました。それが僕の初めての本のタイトルになるとは、まったく思いませんでした。Googleありがとう!

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