10月26日、シノフスキーは上機嫌だった。Windows 8発表直後、二人三脚でマイクロソフト自社ブランドのコンピュータ、Surfaceを開発してきたハードウェア開発のトップ、パノス・パネイと共にSurface RTを発売。このときの様子は「マイクロソフト、iPad攻略作戦を開始(参照リンク)」でお伝えした。
このとき、発表会場で話したシノフスキーはいつも通り、おどけながら、しかし自信を持って開発した製品について語っていたのだ。彼は自らをエグゼクティブではなく、プログラマーと自称し、責任者として忙しい時間を過ごしながらも、合間に必ず担当製品のプログラムコードを書くという生粋のプログラマーである。
彼の表情や話し方には、何らいつもと違う様子はなかった。
ところが、週末を挟んで翌週、30日になると表情だけでなく、喋る様子そのものが大きく変わっていた。このインタビューは、本来、まったく取材時間が取れないとされていたシノフスキー自身が、「ぜひとも話をしたい」と時間を作り15分間だけ話をしたもの。PR代理店によると、これが彼の最後の公式なインタビューだったという。
その内容はともかく、いつもとは全く違うネガティブなオーラにたじろいだ。話の内容もいつもより抑えめで、決して「自分からインタビューを受けたい」とPR代理店に申し出た雰囲気はなかった。これまでにシノフスキーとは何度も話をしているが、明らかに体調不良、あるいは不安定な状態だったが、それが世界中を飛び回ってWindows 8の発売イベントを回ったことによる体調不良なのか、それとも精神的なものなのかまでは判断できなかった。
しかし、振り返ってみれば、この間に何かがあったと考えられる。マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマーは、自分の経営方針に合わない人間と、長い議論をするのが不得手だと言われている。バルマーがCEO時代に突然辞めていった幹部達の多くは、バルマーとの口論の翌日に辞任させられている。直近では昨年1月に元サーバ&ツール部門プレジデントのボブ・マグリアが退社したが、このときもバルマーとの衝突から48時間以内に社外へのニュースリリースが発行されたという。
社運をかけたWindows 8、Surfaceが発売された直後に、その総責任者が退社する。これはマイクロソフトにとって避けなければならない事態だ。Windows 8が作り出す数年先のビジョンを嬉々として語っていたシノフスキーが、退任の道を自ら望むはずはなかろう。では、製品発表から数日の間に、いったい何があったのだろうか。
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