一方、日本映画はどうなのだろうか? 次表は1960年の邦画興行収入ベスト10である。観客動員数は1958年がピークなので、映画全盛期をやや過ぎたあたりだが、まだ元気なころだ。
ランキングを見ると、米国同様にドラマ主体のスター主義作品が多い。当時人気絶頂だった石原裕次郎が『天下を取る』『闘牛に賭ける男』『喧嘩太郎』『あじさいの歌』の主役で、そのスーパースターぶりがうかがえる。ちなみに同じく看板スターの小林旭も『波濤を越える渡り鳥』の主役で、日活黄金時代の最盛期を物語っている。
日本映画の場合、1917年から制作がスタートするアニメが、ファンタジー系作品の一端をになうことになる。ただ、一般的には青少年向けの講談風ポケット本である立川文庫(1911年設立)から刊行された『猿飛佐助』『霧隠才蔵』をテーマとした、トリック撮影の忍者映画からファンタジー系作品は始まったと言われている。
『南総里見八犬伝』などの伝奇もの、『牡丹灯籠』などの怪談ものもファンタジー系作品に入れてもいいだろうが、本格的なものでは山本嘉次郎監督の超大作『エノケンの孫悟空』(1939年)が挙げられる。『オズの魔法使い』タッチのミュージカル映画だが、ロボットやテレビが登場する設定はもちろん、日本初のマットペイント(実写映像と背景画の合成)、ミニチュアを駆使した作品作りは本格的なファンタジー系作品の誕生と言える。
ちなみに『エノケンの孫悟空』の特殊技術撮影は、特撮の始祖とも言える円谷英二によるもの。その円谷英二の名を世にとどろかせたのが『ゴジラ』(1954年)である。これ以降、怪獣やウルトラマン、仮面ライダーといったスーパーヒーローなどを中心とした特撮と、1958年の東映動画製作『白蛇伝』から始まるアニメによって、日本でのファンタジー系作品が形成されるのである。
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