進む若年層の軽自動車シフト――今こそ「軽自動車」の定義を見直すべきだ神尾寿の時事日想(2/3 ページ)

» 2012年11月28日 13時16分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 ホンダがしたたかなのは、このNシリーズ用のプラットフォーム やパワートレインを元に、今後3年で軽5車種を開発・投入する計画であることだ。Nシリーズはプラットフォームを一新したために初期投資コストこそ他社の軽自動車よりかかっているが、基本構造や生産工程そのものは「軽自動車でも利益が出る構造」(ホンダ幹部)となっている。そのためNシリーズコンセプトの新型車を投入し、それらをラインアップとして売っていくことで、軽自動車市場でホンダは着実にビジネスをしていく計画だ。第1弾として投入した「N BOX」と第2弾の「N BOX +」は、現在の軽自動車市場で重要な"スペースユーティリティ"と"燃費"での競争力を重視したものだったが、第3弾の「N-ONE」では一転してデザイン性を重視。若年層や女性が、カジュアルに乗れるパーソナル性を追求した。

Nシリーズの第3弾、「N-ONE」

 さらにホンダは軽自動車市場に、2人乗りのスポーツカーも投入する。これは今年9月にホンダの伊東社長が明らかにしたものだが、「アグレッシブな走りを実現する軽自動車のオープンスポーツカーを、2014年に発売する」という。軽自動車といえば"地方の生活実用車"というイメージが強いが、N-ONEや将来のオープンスポーツカー投入でも分かるとおり、ホンダは軽自動車市場に普通車並みのバリエーションを構築しようとしているのだ。これはホンダが、「国内自動車販売市場の数量的な主戦場は、いずれ軽自動車になる」と見ているからに他ならないだろう。

若い男性でも「マイカーは軽」が急増

 軽自動車に対する消費者の意識も変化している。

 ソニー損保が11月26日に公開した「2012年 全国カーライフ実態調査 前編」(参照リンク)によると、軽自動車の所有率は前年代を通じて増加しており、この2年で6.6ポイントも上昇しているという。とりわけ顕著なのは10代・20代男性層の変化で、ここだけ見ると軽自動車の所有率は2年で11ポイントも上昇している。これまで軽自動車というと、若い女性や主婦層がユーザーの中心であり、男性層は普通車を選ぶ傾向が強かった。ファミリー層である30代〜40代の男性はミニバンを、20代の若い男性でもコンパクトカーやミニバンを選ぶ人が多かったのだが、それが確実に変わってきているのだ。

全回答者3000名に対し、主に運転している車のボディタイプを聞いたところ、「軽自動車」が最も多く34.9%、「ミニバン」「コンパクトカー」「ステーションワゴン」と続く

 むろん、その背景に経済的な事情が大きくあることは間違いない。今回のソニー損保の調査でも、クルマで負担を感じるものとして「車検・点検料」や「自動車諸税」、「ガソリン代・燃料代」が挙げられており、クルマの維持費に対する消費者の割高感が年々強くなっていることが分かる。とりわけ最近の若年層は、正規雇用・非正規雇用を問わず可処分所得が目減りしており、高齢化社会を押しつけられる閉塞感も加わって節約志向が高くなってきている。「男が軽自動車なんてカッコ悪い」などと見栄をはる昭和的な古い発想が減少し、維持費の安さから“賢い選択”として軽自動車を選ぶ若い男性が増えてきているようだ。

1カ月あたりの維持費を聞くと、平均金額は1万5600円。運転しているクルマのタイプ別に見ると軽自動車の維持費が最も安く、1万3100円

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