AKB48は日本製造業の正当なる後継者だ(1/3 ページ)

» 2012年12月05日 08時00分 公開
[坂口孝則,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:坂口孝則(さかぐち・たかのり)

未来調達研究所取締役。大阪大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。未来調達研究所株式会社取締役として、コスト削減のコンサルタントを行う。著書に『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)など。


 2012年6月に実施された第4回AKB総選挙では総投票総数は138万票に至った。第1回の総選挙が5万票だったのに比べて、わずかの期間で27倍ほどに拡大している。みんながテレビ中継に釘付けになったこのイベントは確かに国民的イベントと言えるほどにまで成長した。また、先日発表された2012年の上半期のオリコンチャートはAKB48とその姉妹グループで塗りつくされた。

 このモンスターグループのヒット要因はなんだったのか。

 これまで、AKB48の躍進理由がさまざまな観点から説明されてきた。もちろん、楽曲の良さ、メンバーひとりひとりのキャラ、「会いに行けるアイドル」というコンセプト抜きには語れない。しかし、説明される要因のどれもが、決定的なものではない。もし何か1つの要因だけによるものであれば、ほかのアイドルグループが真似して、あっというまに人気を博しているはずだ。

 2005年に結成され、2006年からライブを本格化したAKB48だったが、時にメンバーの数の方が観客より多いこともあった。そんな時にも秋元康さんは自ら会場に出向き、ファンのひとりひとりに、よりよくするための改善点を聞いて回った。また、AKB48のスタッフは、ファンが集うファミリーレストランに出かけ、既存のファンを少しでも楽しませることのできる方法論を模索していった。もちろんクレームも入ってくる。それを同じく、ひとつひとつ解消していった。

 秋元康さんの発明は「カイゼン」「顧客志向」を製造業だけではなく、アイドル生産にも応用したことだった、と私は思う。日本製造業の代表選手である自動車メーカーは、生産システムや商品をひとつひとつ顧客に合わせて変化させていった。私が自動車メーカーに勤務していた経験から言えば、顧客のどんな小さな苦情もすべて解消するように検討する。使い勝手、乗り心地、デザイン、そして販売員の態度に至るまで、次世代商品の開発や店舗運営に反映していく。その「カイゼン」「顧客志向」の徹底さは、異常とも思えるほどだ。

 かつて日本の製造業が優れていた理由は、何か特定のプロセスにあったのではない。それぞれのプロセスが他国とくらべて1%だけでも2%だけでも優れていた。それが積み重なることで大いなる優位性につながっていったのだ。

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