なぜ「ストッキング」と「水虫薬」を同じ売り場で売るのか?カイモノマーケティング(1/2 ページ)

» 2012年12月10日 12時00分 公開
[澤地正人,Business Media 誠]

著者プロフィール:澤地正人

1976年東京都生まれ。店頭における営業活動や、販促支援、売り場づくりまでを行う「店頭マーチャンダイジング事業」を展開する株式会社マックス取締役。店頭を起点としたマーケティング部門の統括責任者として、価値を伝えきる売り場・売り方の実現について、メーカー様向けに流通戦略から店頭施策、販促企画など幅広いプランニングを手掛けている。近著に『セールスデザイン〜売れる仕組みの作り方〜』がある。


カイモノ カニ鍋のおいしい季節になりましたね

 みなさん、スーパーマーケットなどで、こんな売り場を目にしたことありませんか? 例えば、鍋の時期によく見られるコーナー。鍋つゆ、ポン酢、だしの素など、鍋を作る際に必要な商品が陳列されています。

 これは、クロスマーチャンダイジング(クロスMD)といって、関連した商材を陳列することにより、購買を促進させる手法です。単品だけの陳列と比べて買い上げ品数を増やせます。また、商品の「価値」を訴求するため、価格競争を避けられる狙いもあります。お客さま側にとっても、買い忘れを防止したり、その場で全部そろうので買い物効率が高まったりと、さまざまなメリットがあります。

 ところが、クロスMDには「簡単に実現できない」という小売業界ならではの弱点もあります。今回は、具体的な事例をみながらクロスMDを類型化してみましょう。

クロスMDの売り場を考えてみる

 小売の現場では、品出しや発注、在庫管理といった店内作業が中心となり、「売り方」を考えることまでは手が回らないことが多いのです。そのため、メーカーが自前で売り場づくりをして小売業を支援する「店頭マーチャンダイジング活動」を行う企業が増えています。

 例えば、筆者の所属するマックスでは、この店頭マーチャンダイジング活動のアウトソーサーとして、日夜、売れる売り場づくりを全国で手伝っています。その経験から、クロスMDという手法を3つの類型に分けてみました。

1. ワンストップ型

 その場ですべての関連商品がそろう売り場です。もともと買うつもりだったお客さまに対して必要なモノを提示するので、売り場移動の手間が軽減され、買い物の利便性が高まります。「お惣菜×お茶」という関連陳列はワンストップ型の代表です。

2. インフォメーション型

 買う気のなかったお客さまにクロスMDの売り場を見て、買う気を起こさせるのがインフォメーション型です。具体的には気づきを与えたり、思い出させたりという「想起するきっかけ」を与えます。売り場から情報発信を行うことで、想定外の購買を促し、買い上げ点数をアップします。

 例えば「お酒×ウコンドリンク」。お酒を買いに来たお客さまに「忘年会シーズンで胃が疲れるから、買っておくか……」と思わせて、「ついで買い」を生み出します。

3. ソリューション型

 商品の関連性をまったく認識していなかったお客さまに「提案」することで、意識になかった「潜在的な需要」を掘り起こすクロスMDがソリューション型です。例えば「ストッキング×女性用水虫薬」がこれに当たります。

 冬場のブーツ着用などで女性の水虫が増えているようですが、自分が水虫であるという認識がない人も多いそうです。そういった人に、想像もしていなかった商品を提案し、お客さまの課題解決につなげます。また、新規ユーザーの獲得が見込めます。

カイモノカイモノカイモノ (左)お惣菜×お茶の例。ポスターやPOPも添えられています(中)お酒×ウコンドリンクの例。忘年会シーズンにはてきめんです(右)ストッキング×女性用水虫薬の例。そもそも水虫だと気づいてない人も……
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