鉄道のトンネルは、安全なのか杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)

» 2012年12月07日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 なお、青函トンネルは換気専用のトンネルを持っていた。トンネル工事の調査用に掘った先進導坑(断面積の小さなトンネル)を転用している。トンネルには与圧による大規模な換気システムが稼働しており、線路がある本坑(主なトンネル)に並行する先進導坑と斜坑(地下へ斜めに掘った道路)が換気路だ。もうひとつ、作業坑が並行しており、トンネル事故の際の避難路を兼ねている。避難用の駅として竜飛海底駅と吉岡海底駅があり、このうち竜飛海底駅を利用した見学ツアーが4月25日から11月10日まで開催されている。

青函トンネルの本坑。新幹線と在来線に対応するため線路は3本
換気と防火のため強固な隔壁が用意されている。トンネル火災が起きると、この壁を開放し、煙を一気に吸い出す

 道路トンネルの崩落事故というと、1996年2月の豊浜トンネル(北海道)が記憶に新しい。トンネル内に幅50メートル、高さ70メートルの岩盤が落ちた事故だ。原因は付近の湧水が冬季に凍り、夏に解けるという周期を繰り返し、岩盤に亀裂が深まったためとされた。このトンネルでは事故の5年前と2年前に小さな崩落が起きていたが、ここまでの規模の崩落は予見できなかった。

 今回の笹子トンネル事故は、トンネルそのものの構造ではなく、トンネル内の造作物による事故だ。自然と人工物の接点ではなく、すべて人工物である。点検をしっかり行えば防げたはずで「人災」と言わざるを得ない。

青函トンネルは特急「白鳥」に乗り、竜飛海底駅で下車するツアーがある

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