「自殺者が減っている」はウソ? 変死体が増えている窪田順生の時事日想(1/3 ページ)

» 2012年12月11日 08時02分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 この週末、前原誠司国家戦略担当相が滋賀県に応援演説にかけつけ、集まった聴衆にこんなことを言った。

 「民主党政権の3年3カ月で有効求人倍率が上がって失業が減り、GDPも増え、倒産件数が減り、自殺者も減少傾向になった」

 つまり、我々は一定の成果を挙げたではないかというわけだ。この言葉をどうとるかは有権者個々の判断だから何も言うことはないが、個人的に引っかかったのは「自殺者の減少傾向」というくだりだ。

 もちろん、大臣がデマを言うわけがなく、これにはちゃんとした根拠がある。先日、警察庁が年間の自殺者が1997年以来、15年ぶりに3万人を下回る可能性が強まったと発表したのだ。

自殺者数の推移(2011年まで)。警察庁の発表によると、2012年の自殺者数は15年ぶりに3万人を下回るという

 今年1〜11月の全国の自殺者は前年同期比9.8%減の2万5754人(男性1万7840人、女性7914人)で、月別にみると、2〜3月が前年同期に比べるとわずかに多かった以外は9カ月間ですべて下回り、5月は25.5%、6月は24.1%という大幅減となったのである。

 確かに、事実として民主党政権は自殺者対策で一定の「功績」がある。自殺を考えている人に気づき、声をかける支援者を「ゲートキーパー」というのだが、こういう人たちをもっと増やそうと、内閣府が知恵をしぼってひねくりだしたキャッチフレーズがあった。

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