「プロ野球選手よ、私生活でも模範選手となれ」とはいうものの……臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(1/2 ページ)

» 2012年12月20日 13時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

著者プロフィール:臼北信行

日本のプロ野球や米メジャーリーグを中心としたスポーツ界の裏ネタ取材を得意とするライター。WBCや五輪、サッカーW杯など数々の国際大会での取材経験も豊富。


 どんな世界にも必ず裏がある。それはプロスポーツ界も同じ。メディアの報道ではどうしても取材対象者の清く正しいライフワークや華やかな要素ばかりがクローズアップされるが、実際は必ずしも真っ当なことばかりではない。

 きっとこの冬もプロ野球の契約更改で大幅アップを勝ち取り、満面の笑みを浮かべるスター選手の姿に羨望の眼差しを向けている人は多くいるだろう。しかし、こうした成功者たちの中には世間でほとんど報じられることのない「もう1つの顔」を持っている選手もいる。

 「プロスポーツの世界に身を置く人間は、ただ単にプレーで結果を出せばいいというわけではない。われわれはみずからの言動や立ち居振る舞いはもちろん、私生活の面でも“モデルプレーヤー(模範選手)”とされなければならない」とは、ヤンキースのカーティス・グランダーソン外野手の言葉。

 MLB(メジャーリーグ機構)の国際親善大使を務めるグランダーソン選手が2012年12月上旬に来日した際、講演会で述べて多くの拍手喝采を浴びていた。だが、今回は彼のいうような“モデルプレーヤー”とは評しがたいプロ野球選手たちの「もう1つの顔」について取り上げてみたい。

メジャーで活躍したA投手のケース

 日本の球団からメジャーリーグ移籍を決意したA投手。メジャー契約を勝ち取ることに成功すると、1年目から目覚しい活躍を遂げた。当然、彼のもとには日本人記者からの取材が殺到する。

 ところが成功によって米国内での名声を手にするようになると、徐々に“変人ぶり”が露わになっていった。米国在住のベテラン日本人記者は次のようにいう。

「移籍したころのAは、とても気さくで“いいヤツ”だった。『ご飯でも食べに行きましょうよ〜』と自分のほうから積極的に声をかけてきて、われわれのどんな取材に対しても笑顔で応じていた。彼は英語をきちんとマスターしているわけでもなかったので、異文化でのコミュニケーションに不安を感じていたのだろう。でも、それが一変したのはAが移籍から少し経って、チームの戦力として認知され出した5月ぐらいのころだったと思う」

 いつものように試合前に日本人メディアが取材に行くと、愛想が良かったはずのAが急に「あ、いま忙しいからさ」とピシャリ。それを機に、ほとんど取材に応じることもなくなっていった。

 数日後、ある日本人記者が「日本に一時帰国することになりましたので……」と挨拶にいくと「ハイハイ、とっとと帰ってください」。思わず耳を疑い、顔を近づけたその記者に、Aは手で払いのけるような仕草を見せて「ああ〜っ、近いんだよ!」と激高。周囲の日本人メディアを凍りつかせた。

 こんなこともあった。ある若い日本人記者に「日本で買ってきたものです。良かったら召し上がってください」と手土産の和菓子を差し出されたAは「何これ? こんなものいらないよ」。

 これだけでも十分に非礼だが、その後のAはさらに驚くべき行動に出た。「そう、おっしゃらずにどうぞ」といわれて、その和菓子を渋々受け取ると自分の専属通訳を呼びつけて「あのさ〜、このゴミ、サッサと捨てといて」と一言。まったく悪びれる様子もなく、これ見よがしに深いため息までついていたというから開いた口が塞がらない。

 Aの対応には日本人メディアばかりでなく、チームメートも苦慮していた。「こちらから挨拶しても返事が返ってこない」のは日常茶飯事。Aとロッカーが隣同士だったある日本人メジャーリーガーは話しかけても無視されるどころか、ときに何の理由もなくニラみつけられたこともあって、すっかりノイローゼになってしまった。

「Aはその日本人メジャーリーガーが自分よりも注目を浴びることにジェラシーを感じ、露骨に嫌がらせをしていた。さすがに、その日本人メジャーリーガーは翌シーズンからAとロッカーの位置を離されることになったが……。球団側はAに『もう少し周りのことを考えるように』と注意したものの、ほとんど改善されることはかった。結局Aが活躍をしていたから、球団サイドもあまり強くいうことはできなかったのです」(前出の記者)

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