1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『震える牛』(小学館)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『鋼の綻び』(徳間書店)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo
明日28日の業務を経て、年末年始の休暇に入る読者が多いのではないだろうか。帰郷する人、旅行に出る人と休暇の過ごし方はさまざまだろう。もし旅行の道中で、あるいは自宅で読書をするタイミングがあれば、先の東日本大震災に関連する書籍を手に取ってみるのはどうだろうか。
東北では、いまだ仮設住宅での生活を強いられている被災者が多数に上る。また原発事故の影響で、郷里を離れての生活を強いられている福島県民も多い。
昨年来、被災地を取材して回った経験から言うと、現地ではまだ何も終わっていないのだ。被災地に心を寄せてもらうために、今年最後の当欄は、オススメの関連書籍をいくつか取り上げる。
本題に入る前に、今年11月の出来事を紹介させてもらう。11月の中旬、私は大阪の書店さんの招待で同地を訪れた。同店の小さなホールで40人ほどの聴衆を前に、担当編集者とともに拙著に関するトークショーを行った。
作品に関する話題が終わったあと、会場から質問を受け付けた。その中で、震災被災地の現状を尋ねる声があった。いくつかのオススメ書籍をあげたあと、私はこう答えた。
「原発事故の影響で、福島県沿岸の浜通り地方を中心に、いまだ15万を超える人たちが住み慣れた土地を離れざるを得ない状態に置かれている。“原発難民”を事実上放置している政府に対し、強い憤りを感じる」――。
同時に、福井県の原発で福島第一と同じような事故が起こったら、大阪府の近隣がどの程度の“同心円のカバー”を被せられるかを説明すると、会場は水を打ったように静まり返った。
「そういう話は、あんまり新聞やテレビで教えてくれへんな……」
会場の一角から、こんな声が上がったことを私は今も鮮明に記憶している。このとき同時に感じたのは、大手メディアの震災関連報道が激減し、元々関心のあった他地域の人々の記憶から被災地の情報が抜け落ちようとしている、という点だ。
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