丸の内タニタ食堂を運営するきちりが目指すもの儲かっている企業にはワケがある(3/3 ページ)

» 2013年01月09日 08時00分 公開
[渡辺聡、佐々木靖人,Business Media 誠]
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営んでいるのはレストラン向けのプラットフォームビジネス

 会社全体を見た場合、こうしたサービスを自然に実現できる業態パッケージ開発をすることが本部スタッフの仕事になります。高いサービスを要求してマニュアルを作り込み、現場に叩き込むべくプレッシャーをかけるだけだと、組織は疲弊して壊れてしまいます。店舗の作業レベルにおいて、やらなくていいことを削ぐことで経営資源(=店舗スタッフの時間)をどこに向けるかはっきりさせておくこと。これが現場レベルでの選択と集中を自然と成立させるため、サービス品質を向上させるための戦略実現の肝となります。

 かつて外食ビジネスは、“町のレストラン”とも言うべき家族経営的な店舗運営が中心でした。それが、資金調達というハードルを越えて、短い期間での多店舗展開で規模のメリットを享受できるフランチャイズという仕組みを取り入れて成長してきました。

 しかし時代が変わり、消費者の財布のひもが固くなっている昨今、味もサービスもマニュアル運用で画一的になりがちなフランチャイズの仕組みは、顧客満足を生みにくい仕組みともとられるようになってきています。そうした状況下、価格と体力を削り合う競争を避けるために、何らかの顧客提案をプラスすることはもはや必須事項です。

 きちりの場合の“プラス何らか”は、店舗レベルではお手ごろ価格でのサービス提供と表現できます。一方、経営レベルでは現場の自由度を高くしつつ、お客さんに向き合ってもサービス全体が壊れないように作り込む業態開発能力となります。

 個別のレストランブランドではなく、本部の業態開発能力をコアの競争資産ととらえると、きちりはレストランビジネスというより、レストラン向けのプラットフォームビジネスを営んでいるのだと理解することもできます。タニタに提供している付加価値も、店舗運営ノウハウととらえるより、このプラットフォーム機能の提供ととらえた方がより正確でしょう。

 実際、2012年6月期の決算説明会資料でも、B2Bビジネス展開の構想を紹介するスライドで、「KICHIRIプラットフォーム」というフレーズが出ています。

2012年6月期の決算説明会資料より

 直営型の店舗展開を軸とした高品質なサービスを維持しようとする限り、どうしても出店数は限られてくるため、事業規模は一定数で頭打ちとなります。とはいえ、値ごろ感も売りにしているので、顧客単価を上げる道もとれません。

 そこでさらに成長しようとするなら、レストラン以外の道を探る必要が生まれてきますが、これらの各種B2Bビジネスは新しい道の候補となります。ゆくゆくは、丸の内タニタ食堂がタニタのショールームとなっているように、きちりはB2Bビジネスに収益の軸足を移し、直営店舗はB2Bビジネスのショーケースという位置付けに変化していくのかもしれません。

 この新しい道を探る動きとして、決算説明会資料では「エンタメ分野の会社との事業展開(検討中)」「第一次産業分野の会社との事業展開(検討中)」と、タニタ以外のコラボレーションについても検討していると書いています。第一次産業分野との垂直的なサプライチェーンモデルは他社の事例も多数ありますが、エンタメ分野ではどの会社をパートナーに、どのような形を目指すのでしょうか。楽しみなところです。

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