丸の内タニタ食堂を運営するきちりが目指すもの儲かっている企業にはワケがある(2/3 ページ)

» 2013年01月09日 08時00分 公開
[渡辺聡、佐々木靖人,Business Media 誠]

きちりの関わるレストランブランドの特徴とは

 そのための例となるのが、同社のハンバーグレストラン「いしがまやハンバーグ」です。

 きちりのWebサイトのコンセプトページには載っていませんが、同社の戦略発想に「家庭でできないことをやる」というものがあります。この業態では、石窯が“家庭でできないこと”というわけです。石窯は店の真ん中に配置しており、単なる調理器具というだけでなく、調理過程を見て楽しめるものともなっています。

店の真ん中にある石窯

 店舗オペレーションにおいては、調理工程を含めたプロセス全体をコンパクトにできるようにメニュー設計段階から煮詰めることで、厨房に張り付く人と時間を極力減らしています。そして、それによってねん出した時間を、お客さんへのサービスに割くというわけです。

 レトルト食品や冷凍食品などを使えば業務の簡素化は単純な形で実現できますが、そこそこの味のものしか出せなくなります。そうではなく、味を妥協せずに実現できることは何かということを突き詰めて整理していくのがきちりの基本姿勢です。

 従業員にとっても、一定の裁量が与えられ、お客さんへのサービスに集中できるのは優れた職場環境でしょう。外食におけるおもてなしを学べる場として、きちりの店舗は機能しています。ただ、マニュアルベースの店舗運営ではないため、単純な横展開は難しいという判断から、あまり多過ぎない店舗数での直営モデルが基本方針となっています。

 このように、まずは同一価格帯の中でしっかりおいしいものを出すという基本を踏まえた上で、石窯という分かりやすいプレゼンテーションを加え、顧客サービスのきめ細かさで満足度を高めるというわけです。これによって、昨今重視されているロイヤリティ経営の鍵となるリピートが実現できるというわけです。

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