桜宮高校の生徒が、自分たちで記者会見を仕掛けた理由窪田順生の時事日想(3/4 ページ)

» 2013年01月29日 08時08分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

「黙って見ている」方法

 こういう気質が、大阪の教育関係者には多い。

 分かりやすいのは、橋下氏が府知事になったばかりの2008年10月、第二京阪道路の建設予定地で立ち退きに応じない保育園があったので府が行政代執行をしたケースだろう。この園の畑では2週間後に「サツモイモ掘り」が予定されていた。

 記憶にある人も多いと思うが、ワイドショーやらで、職員らが「子どもたちの野菜を奪わないでください」なんて抵抗したり、踏み荒らされた畑を前にした園児が泣き叫んだりという映像が流れて、府には「芋掘りぐらいやらせてやれ」なんて抗議電話がじゃんじゃんきた。

 これに対し橋下氏は「園児の涙を利用した」と批判し、それにのっかったメディアは、園が代執行を妨害するために園児を動員したみたいに報じたが、これは事実ではない。そんな単純な戦法ではなく、「黙って見ている」という手段をとった。

 サツマイモは植えつけから収穫まで100日ぐらいかかるので、10月に収穫とすると5〜6月に種イモを植えたということになるのだが、ちょうどこの時期、園のオトナは分かっていたのに、園児たちに伝えなかったことがある。

 ここの用地話は昨日今日始まったことではなく、5年前から進められており、2008年4月には「所有権」が西日本高速道路会社に移転してしまったのだ。

 つまり、この保育園は、所有権がよそに移っていよいよ絶望的になってから、子どもたちに「希望」を埋めさせた。「秋になったらお芋掘りしようね」なんて言いいながら。

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