レーダー照射はあるけど……公明党山口代表「8月12日を目標に日中首脳会談を実現したい」(3/4 ページ)

» 2013年02月08日 11時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

終戦の日の靖国神社参拝は「安倍首相が賢明に判断するだろう」

――韓国との間で生じている竹島問題で国際司法裁判所に提訴するかどうかという話がありました。そうしたことは問題解決につながるのでしょうか。

山口 それは1つの選択肢ではあります。日本の主張を国際的に認めていただく、またそれを国際社会に広く知っていただく、それがこの問題の解決の1つの強い背景になるという考え方はあると思います。ただ、実際に解決につながるかどうかは慎重に考えていかないといけないと思います。

 竹島の領有権については我が国の一貫した主張がありますが、今、韓国側が実効支配しているので、それを力で脅かす、あるいは奪い取るということはやるべきではありません。だからこそ、この問題よりもむしろ日韓のほかのもっと全体の大きな両国の利益につながる関係をよく見て、関係の改善と安定の発展を図ることの方がはるかに重要な選択だと思います。

――尖閣諸島についてはいかがですか。

山口 尖閣諸島については、我が国は「歴史的にも国際法的にも固有の領土だ」と言ってきました。また、現に有効支配も維持している状況だと認識しています。その点で、我が国から国際司法裁判所に訴える必要性は感じていません。

――人民日報で発表された習総書記の講話から中国側のメッセージを受け止めたということですが、具体的にどういうメッセージを受け止めたのでしょうか。また今年は日中平和友好条約35周年ですが、どういう年にしたいと望み、そのために安倍首相にどういう助言をしましたか。

山口 この講話の内容について、日本ではあまり詳細には報道されていません。しかし我々が感じているのは、従来の中国の主張、強い中国の意志の表れの部分だけでなく、もう1つ、隣国に対して迷惑をかけてはいけない、緊張を緩和させよう、関係を改善させようという強い主張も一方で出しています。こういった主張が就任早々の習総書記から出されたということに、新しい変化を感じ取っています。

 これは詳細な分析も必要だと思いますし、今後それも参考にしながら、どう対応していくかということもよく考えなければいけないと思います。しかし、いずれにしても人民日報に講話として載ったということは中国国民、国内に対する重要な意味もあろうかと思います。

 今後のことを考えると、1つは両国の国民感情を融和的にしていく、そして政府の関係機関の意志を統一して、関係改善の方向に向かわしめるということ。そして対話を重ねて協議を綿密にやった上で、首脳会談を開くこと。首脳会談のタイミングについては、丹羽宇一郎前大使は桜の咲くころ、桜の咲く場所はいろいろあるから季節のズレもあるがとおっしゃったそうですが(参照リンク)、我々から今、時期を申し上げるわけにはいきませんが、条約締結の日(8月12日)を1つのポイントにして、できるだけ早い機会に達成することが望ましいと思います。

 習総書記もおっしゃったように、対話が進む積極的雰囲気、環境をどう作れるかという双方の努力にかかっていると思いますので、日本側としてもさまざまな努力をしたいと思います。安倍首相はこの講話があったことも外務省などから多分知らされていると思いますので、その上でどう対応していくかということは今後の慎重な努力、冷静な努力にかかっていると思います。

――報道によると、山口代表は尖閣諸島問題について棚上げを主張しているとも聞いているのですが、実際に言及されたことがあるか確認させてください。また1996年にマニアで橋本龍太郎首相と江沢民総書記が尖閣諸島について会談した時、橋本首相は「尖閣諸島は我が国の固有の領土と主張していますが、中国側には違う主張があることをよく知っています」と言いましたが、これは今の日本政府の領土問題は存在しないという主張とはニュアンスが結構違いますのですが、これについてのお考えをお聞かせください。

山口 私自身が棚上げという言葉を使ったことはありません。政府、与党として主張は一貫しているので、日本側が棚上げすべきとか、あるいはそれで合意したという立場ではないわけです。しかし、両国関係が困難に陥った時、中国の方々は問題を大きくしないために、そして優先すべき利益をわきまえて、いろいろ知恵を出されたことがあったということは言及したことがあります。この問題を解決するために、双方がさまざまな知恵を巡らせて、解決に努力することが重要だと思います。

 また、そのほかについていろいろご質問がありましたが、今この雰囲気の中で、非常に敏感な部分があるので、私がここであえて言及しない、今後の対話と協議の中に委ねるべきだと思っています。

――この問題の中で公明党としてはどのような役割を果たすべきとお考えですか。

山口 公明党は連立政権の一員なのですが、この領有権やあるいは問題解決への具体的なあり方というのはやはり政府が責任を持ってやっていく必要があると思います。それを与党としてサポートしていく、また政府にできない役割を与党が果たすという立場で、今後も連携を密にしながら対応を考えていきたいと思います。対話の扉は開かれたわけですから、今後、もう1つの与党が対話を重ねるということもあっていいでしょう。また、外交ルートにのせて解決を図る努力をすることもあるべきだと思います。そういう中で公明党は大きな目標に向けて、役割を果たしていきたいと思います。

――習総書記についてどのような印象を持ちましたか。

山口 私が習総書記とお会いするのは、今回で4回目になります。最初は2007年、そして2009年に来日した時に公明党代表として会談しました。2010年には当時は野党でしたが公明党代表団が訪中して、お会いしました。今回で4回目になるわけですが、(習総書記は)非常に落ち着いて穏やかな話しぶりです。また、過去の会談の中では非常に柔らかいにこやかな表情を見せられたことも何度もありました。

 今回の訪中では冒頭の場面はやや堅い表情にも思われましたが、実際の会談の中では穏やかに対話できたと思っています。そういう点で、非常に強硬に物事を力ずくで進めていくという印象は持っていません。むしろ、さまざまなところに配慮をめぐらせながら、妥当な統合を図っていく人に思われます。

 また、かつて習近平氏のお父さん、習仲勲氏が副首相の時代に公明党の青年訪中団が行ったことがあり、迎えていただいたという由来もあります。

――尖閣問題など中国との関係について、安倍首相とはどのような話をしていますか。

山口 我が国政府は一度も有効支配を失ったことはない、その点を重視して領有権の問題は存在しないという一貫した主張をしてきました。しかし、現実に危機が起こったり、さまざまな分野で課題が生じたりしていることは事実なので、それが外交面での問題になっていることは私も言及しました。

 そこでどう対話と協議でコントロールしながら解決していけるかということが今後の重要な課題だと思います。この問題だけに視点を集中させると、大局を失いかねないと思います。ですから、もっと大きなテーマも含めて、どういう関係改善を図っていくかということを両国で綿密に協議を重ねていく必要があると思います。そこで政治家が最終的な解決を図る、隘路を打開していく役割も含め、政権としてきちんとコントロールして対応したいと思います。

――8月12日は日中平和友好条約35周年ということでとても良い機会だと思いますが、その3日後の8月15日に安倍首相が靖国神社に行くべきかどうかについて、山口代表はどう助言しますか。

山口 この問題については、公明党の立場をあえて繰り返しません。一貫した立場をとっていますが、最終的には安倍総理がどう判断されるかということですが、第一次安倍内閣の時はこの問題の与える影響を熟慮して、問題を起こさないように努力されたと思います。習総書記が会談の冒頭で戦略的互恵関係を築いてきた安倍首相の当時の努力を評価したことの中には、そうした対応も含めて評価されたのではないかと思います。そこは安倍首相が賢明に判断するだろうと思っています。

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