「ソースコード」「デリバティブ」――この程度の専門用語も説明できない、大手メディアの脆弱性相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2013年02月21日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

 私自身はITのド素人だが、さすがに朝日の記述には空いた口がふさがらなかった。記事の通りであれば、プログラムを書ける人は誰でも軒並み容疑者扱いとなってしまう。

 これは私の勝手な想像だが、記者の誤りをデスクが気付かず、原稿の最終関門である整理部や校閲段階もすり抜けてしまった単純エラーの連続だったのではないか。野球に例えれば、簡単なゴロを投手がトンネルし、その後もボールがショート、センターの股間を抜け、外野の奥深くに達したような現象だ。あるいは、記者が当初は正しく書いていたものを、間違ってデスクが書き直してしまったのかもしれない。

 「ソースコードってなに?」と誰かが気付いて調べていれば、あるいは社内のシステム関係者に問い合わせていれば、こんなことは起きずに済んだのだ。

経済面は“誤解”だらけ

 朝日の事例は、決してまれなことではない。元経済部記者として在京紙や一般テレビニュースをチェックしていると、先の「ソースコード」のような、“おいおい”とツッコミを入れたくなるような事例にゴロゴロぶつかるのだ。

 例えば、「デリバティブ」という言葉はどうだろう。新聞やテレビでは「デリバティブ(金融派生商品)」と表記されるケースが多い。

 この言葉に対し、一般の読者が抱くイメージはどんなものか。恐らく、投機的、あるいは得体の知れない危うい金融商品、といったものではないだろうか。近年、大企業の破たんの引き金になったり、市場をかく乱する売買を繰り返す投機筋が用いることは事実だが、1つだけ重大な誤解があるのだ。

 デリバティブは、2つの種類に大別される。東証などの取引所で取引される「市場型」と、金融機関同士、あるいは金融機関と一般事業法人の個別契約である「相対取引型」だ。

 市場取引型は、文字通り東証など公的な取引所でやりとりされる。将来時点の売買を現段階でやりとりする先物や、将来の取引の売りや買いの権利そのものを売買するオプションが代表的だ。取引当事者の相場観が間違っていても、すなわち損失が生じるようなことになっても、一定期間後に必ず決済を迫られることから、損失は一定の範囲内でおさまる。また、取引所が監視していることから、不正な行為が行われるリスクも極めて低い。

「デリバティブ」という言葉の意味も誤解されることが多い(写真と本文は関係ありません)

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