世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材し、夕刊紙を中心に週刊誌や月刊誌などで活躍するライター。
2013年2月、米モンタナ州でお昼のトークショーを見ていた視聴者たちは仰天したに違いない。
男女間の関係などを相談する番組の途中、突然とんでもない「緊急放送」が流れたのだ。番組の音声が小さくなり、「ビー、ビー、ビー」という耳障りな警告音の後に、男性の声で緊急メッセージが告げられた。
「当局の発表です。死者が墓場から甦っており、生きている人を攻撃しています。さらなる情報が分かり次第、最新情報はテレビ画面に表示されます。決して甦った死体に近づいたり、捕まえようとしないように注意してください。非常に危険です」
この番組を放送していたテレビ局は直ちに、ゾンビ出現の「緊急放送」が事実ではなく、ハッキングされたものだと発表した。実際にハッキングされたのはテレビ局の緊急速報システム。つまりインフラシステムの一端が、ハッカーによって乗っ取られたことになる。
冗談では済まされない問題だ。いたずらにしても、例えば震災後の日本で何者かが緊急速報システムをハッキングして、「原発施設が北朝鮮のテポドン攻撃を受けて大爆発を起こし、30分以内に大量の放射能が日本中に降り注ぐ」とでもメッセージを流せば、国内は明らかにパニックに陥るだろう。そして日本に対して悪意を持つ国家が本気で乗り出せば、そうしたハッキングは起きないとは言いきれない。
今に始まったことではないが、世界ではハッキングによるこうした「攻撃」が深刻化している。そして最近、米ニューヨークタイムズ紙が、米民間サイバーセキュリティー会社「マンディアント」の調査報告(参照リンク)を報じたことで、サイバー攻撃に関する議論が、世界的に再び大注目を浴びている。
2013年2月18日付けの当該記事では、あらためてこうしたハッキングがすでに国家間の戦いのツールとして駆使されていることが再認識された。マンディアントの報告を引用する形で、記事は中国の人民解放軍に属する秘密組織の61398部隊が、米国の軍事企業や政府機関など115カ所を攻撃してきたと指摘している。さらに記事では、部隊が入る建物の写真まで掲載している。
ちなみに詳細は不明だが、この報告書によれば、日本でも1カ所がサイバー攻撃を受けている。もちろんこれは同社が把握できた数に過ぎず、実際にはさらに多いと考えられる。日本以外にも英国、フランス、台湾、インドなどが同様の攻撃を受けていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング