ちなみに、いくつかの特集記事をチェックしてみた。
円安メリットを享受できる自動車株や関連部品会社株、電機メーカーなどを推奨するコメントがずらりと並んでいた。コメントを寄せているのは、強気、すなわち株価上昇を志向することで知られる証券会社のストラテジストやアナリストたちだ。
証券会社や資産運用会社の知り合いに問い合わせたところ、「日本株の上昇率が他の主要市場と比較してズバ抜けているので、今まで二の足を踏んでいた海外機関投資家が買い増しに動いている」(米系運用会社)、「市況好転で値幅取りのディーリングを再開したネット投資家が増加している」(ネット証券幹部)ことは事実だ。
大口の資金を運用する機関投資家や一般の個人が動いているのは明白だが、ちょっと待ってほしい。
株式市況は将来を先取りする形で動くケースが多いが、アベノミクスはまだ動き出していないのだ。つまり、新しく日銀総裁に就く人物が果敢な金融緩和局面に踏み込み、これが日本のデフレを是正するという道筋はできつつあるが、「実際に思惑通りに動く保証はない」(証券会社のエコノミスト)という現実は、霞(かす)んでいるのだ。
悲観的すぎるというお叱りを受けそうだが、私なりの見立てもある。円安メリットを享受するであろう電機や自動車企業だが、財務や既存設備の再構築に“メリット”を振り向けざるを得ない環境がある。円安で今期の業績は一息つけるのは事実だが、来期以降、世界市場で新興国のライバル企業たちとがっぷりよつで対峙し、かつ低下し切った国際的なシェアを奪回するだけの画期的な新製品やサービスを生み出せる余裕は少ないはずなのだ。
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