スマホでクレジットカード決済、客単価アップに期待も――レストラン「3MENDO」の場合PayPal Here導入記

» 2013年03月18日 11時00分 公開
[まつもとあつし,ITmedia]
Photo スマートフォンと小型カードリーダーでクレジットカード決済を行える「PayPal Here」

 その登場以来、さまざまなオフィスで業務の効率化と生産性の向上を支えてきたスマートフォンやタブレット。スマートデバイスと呼ばれるこれらの端末が、今度は小売の現場を大きく変えようとしている。

 これからの小売の現場では、タブレット端末がPOSレジになり、スマートフォンがクレジットカードの決済端末になる。お客さんの呼び込みも、街に立ってチラシを配るのではなく、店の近くに来たお客さんのスマートフォンにプッシュでセール情報やクーポンを配信する――といった具合だ。

 さらにクラウドサービスの普及で小売向けサービスの運用コストも低価格化が進んでおり、中小規模の小売店にとって2013年はまさに「店をスマート化するチャンスの時期」といえそうだ。

 今回、ご紹介する「3MENDO(トレメンド)」は、iPadを利用したクレジットカード決済システム「PayPal Here」の導入で店のスマート化に踏み出したイタリアンカフェ&バー。PayPal Hereは、iOSもしくはAndroid端末のイヤフォンジャックに専用の読み取り機を差し込めば、クレジットカード決済が可能となるサービスで、3月5日に日本で本格的なサービスが始まったばかりだ。

 3MENDOはなぜこのサービスを導入し、実際の現場でどのように活用しているのか。店長の高野透さんにお話を伺った。

Photo PayPal Hereを導入したイタリアンカフェ&バー「3MENDO(トレメンド)」

――(聞き手 : まつもとあつし) PayPal Hereを導入されたきっかけを教えてください。

高野透氏 2012年の5月にPayPal Hereの国内展開を手がけるソフトバンクさんから「プロモーション映像の撮影にお店を使わせてもらえないか」と相談されたのがきっかけです。汐留という場所柄、ソフトバンクの方に食事で利用して頂くことが多かったのです。

 当時はまだ、お店でクレジットカードが使えなかったのですが、時々お客様からカードで支払いたいという要望を頂くこともあり、撮影中に登場したPayPal Hereに興味を持ったんです。「使えるようになったら連絡ください」とお願いして、その年の10月に実際に使い始めることになりました。

―― PayPal Hereをクレジットカード決済の手段として導入したのですね。

高野氏 そうですね。小さなお店ということもあり、現金でお支払い頂くことが多かったのですが、お支払い額が増える夜の時間帯や、パーティなどの団体のお客様、海外からのお客様の場合、カードを使いたいという声もあったのです。PayPal Hereの導入で、それに応えられるようになりました。おおよその客単価が現金だと2千円、クレジットカードだと3千円前後ということもあり、「カードが使えるならもうちょっと注文するのに」というお客様もおられたので、売上にもプラスの効果があると期待しています。

Photo iPadのイヤフォンジャックに取り付けられた三角形の物体がクレジットカードリーダー。普段は店のFacebookの管理やメールチェックなどに活用しているiPadが、クレジットカードの決済端末に早変わりする

―― 導入の決め手になったのは。

高野氏 他のお店の話を聞くと、クレジットカード決済システムを導入するためには、CATと呼ばれる読み取り機をレジの横に設置しなければならなかったり、そこに回線を引き込まないといけなかったりと「手間がかかりそう」という印象を持っていました。また、導入のための費用もそれなりにかかると。PayPal Hereは場所もとりませんし、導入費用はiPhoneやiPadを持っていれば、あとは1200円前後の読み取り機を買うだけと安く抑えられたのも大きいですね。運用コストも必要ないですし。アプリの操作も簡単なので、すぐ使い方をマスターできたのも良かったです。

 もう1つは手数料がリーズナブルであることですね。クレジットカードの売上がそれほど大きくないと、カード会社への手数料が高めに設定されてしまうことが多いのですが、PayPal Hereは一律5%に固定されていて納得感があります。

Photo 小さな三角形のカードリーダーにクレジットカードを通して決済を行う

―― PayPal Hereは、まだ一般には広く知られていない“これからのサービス”ですが、お客様が戸惑うことはないですか。

高野氏 実際のところ「へぇ、こんなのあるんだ」と興味を持たれたり、端末の画面にサインをするのを楽しんでいただけている印象ですね。テーブル会計の場合でも、カードをお預かりしてわざわざ読み取り端末まで持って行かずに済み、回線がつながる場所であれば、お客様の目の前で決済が完了するのも良いと思います。決済の通信にかかる時間も、従来に比べると短く感じますね。

―― PayPal HereはSMSでレシートを送信できるほか、紙のレシートを発行できる小型プリンタも用意されています。3MENDOではレシートや領収書はどうされていますか。

Photo カードのサインもiPad上で行える

高野氏 もともとレジを使っていないこともあり、現金のときと同様、手書きのものをお渡ししています。特に手間が増えたということはないですね。「PayPal HereはSMSでレシートを送れますよ」とお伝えしても、特に必要ないという方が今のところ多いです。

―― 3MENDOではiPadにカードリーダーを接続して運用されていますね。

高野氏 そうですね。クレジットカードの利用が多い夜の時間帯でもバッテリーの持ちを気にする必要がありませんし、メールチェックやFacebookの更新にも使えるので便利です。iPadなら、お店のFacebookにアップした料理の写真をお客様に見て頂くこともできますしね。


 低い導入コストとリーズナブルな手数料。これまで小規模店舗では導入のハードルが高かったクレジットカード決済が、PayPal Hereの登場で身近なものとなりそうだ。

 なおソフトバンクでは、PayPal Hereと連動した小型のモバイルプリンタを用意しており、紙のレシートが必要な店舗のニーズにも対応している。

Photo 紙のレシートを発行できる専用プリンタ「WSP-R240」

電波が届きにくい店舗でも大丈夫?

 地下などにあるショップは、携帯電話の電波が届きにくい場所でも問題なく使えるのかが気になるところ。実はPayPal Hereは、ソフトバンクモバイルのiPhone/iPad/Androidのいずれかの回線契約とPayPalアカウントがあれば、Wi-Fiネットワークを利用して決済を行える。

 店内にWi-Fi環境があれば、携帯電話の電波が届かない場所でもクレジットカード決済を行えるので安心だ。


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