生産部門や物流部門の改革と違って、現場が目の前になく、モノを物理的に扱うわけでもない営業の改革の場合、改革のイメージが共有化されにくい。しかも営業の人間には世間慣れしてしたたかな人が、特に幹部に多い(別段、けなしているわけではないので誤解しないでくださいね)。
そうした人々に対し、本質的な目的から説いて納得を得ることなしに、「とにかくやり方を変えてくれ」「こうしてくれ」といきなり要請しても、反発されるか、表立って反対されなくとも実質的に無視されるのが落ちである。
これはある大手メーカーで聞いた話である。経営企画担当の役員がそうしたやり方で営業部門の幹部に対し改革の検討を要請した。まったく質問も出ずにミーティングがほとんど終わり掛けた間際、営業担当の役員が一言、「で、それで結果が出なかった場合、誰が責任を取るのですか?」と質問した。
経営企画担当役員がはっきりと答えられずにいると、件の営業役員は「ではそれがはっきりしたら改めてご説明いただけますかな?」と締めて、その改革の動きは実質的に頓挫(とんざ)してしまったそうだ。要は、「経営としての狙いと覚悟を明確化しないまま、ワシらに難しい役割を押し付けようったって、そうはいかんぞ」という言外の拒絶に遭った格好である。
かといって、「営業力強化」とか「業務効率化」など、とってつけたような建前だけのスローガンを何度連呼したところで納得してくれるはずもない。経営トップ自身の言葉で、腹を括っていることが伝わらないと、営業幹部としてもへたに話に乗れない。あとでハシゴを外されるのは誰でも嫌なのである。
営業改革を始めるにも成功に導くにも、「何のために営業改革が必要だと経営が考えているのか」という「戦略的狙い」を、腹を割って共有化することが不可欠である。このことは何度繰り返しても足らないくらい重要なポイントである。(日沖博道)
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