コラム
» 2013年03月29日 08時00分 公開

杉山淳一の時事日想:隠れ資産の有効活用は実現できるのか――貨物線旅客化の期待と課題 (4/5)

[杉山淳一,Business Media 誠]

旅客と貨物のベストタイムが重なってしまう

 東海道貨物支線臨海ルートの懸念材料のひとつは、最大のターミナルである横浜駅を経由しないことだ。高島線は横浜駅のちょっと南側を通過しているため、横浜駅からの乗り換えによる旅客移動は望めない。逆に前向きに捉えるなら、根岸線からの旅客が移ることで、横浜駅の混雑緩和になると言えそうだ。また、新線建設区間のコストも気になる。速達性の上では新線がベストだが、収益面では在来ルートを経由し、鶴見駅で乗り換え可能にしたほうが魅力的かもしれない。

新高島線から横浜駅方向を見る

 ただし、最大の懸念材料は、旅客線化によって鉄道貨物輸送の全国ネットワークに見直しが求められることだ。旅客面では横浜―東京間だけを検討すればいいが、JR貨物にとってはそうはいかない。旅客線として最も有効な朝の通勤時間帯に、この貨物線も東京への到着ラッシュを迎えている。このダイヤを動かせるか否かで、JR貨物の旅客化への協力態度が変わってくる。

 鉄道貨物協会が編集・発行している「JR貨物時刻表」によると、現在、東京貨物ターミナルと川崎貨物ターミナルを走る貨物列車は、下りが22本、上りが23本。実際には回送列車や臨時列車の需要もあるから、もう少し多い。それでも通勤路線に比べるとはるかに少ない。しかし朝の上り列車は5時台から7時台に集中している。出発地は福岡、福山、大阪など。途中駅からの積み替えを考慮すると、ほぼ西日本全域となりそうだ。

 荷役の時間を考えると、到着列車は朝、出発列車は夜がベスト。つまり貨物列車は寝台特急のようなダイヤが最適となる。東京駅からの寝台列車が廃止されると、そのダイヤは貨物列車に転用されてきた事例もある。そして、朝到着、夜出発という原則は、全国すべての貨物ターミナルに共通する。そうしたなかで、旅客列車が走らない時間帯をすり抜けるように貨物列車は設定されてきた。

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