隠れ資産の有効活用は実現できるのか――貨物線旅客化の期待と課題杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)

» 2013年03月29日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

旅客化が進む貨物専用線

 ビジネス的な観点をもうひとつ付け加えると、このツアーは「貨物線の旅客化の可能性」を視察できる機会でもあった。高島線については神奈川県・横浜市・川崎市・東京都・大田区・品川区が連携する「東海道貨物支線貨客併用化整備検討協議会」が旅客化を要望しており、このツアーの直後、3月25日に調査視察列車を運行したばかりだ。

貨物支線貨客併用化の検討ルート(出典:東海道貨物支線貨客併用化整備検討協議会)

 武蔵野線の鶴見―府中本町間はかつて旅客化が検討された経緯があり、現在も臨時列車がまれに走行する。鶴見―東戸塚間は通勤時間帯に「湘南ライナー」が運行されているほか、将来は横浜羽沢駅から相模鉄道が乗り入れる計画となっている。貨物専用線なのに旅客列車が走るとは不思議だが、実はこれらの線路はJR東日本が所有し、JR貨物が列車を走らせるたびに使用料を支払う仕組みになっている。

横浜羽沢駅を通過

 このような貨物線旅客化の取り組みの歴史は古い。貨物線の旅客化は、鉄道路線事業としては魅力的だ。なにしろすでに線路があるから、新規路線建設よりはずっと少ない費用で列車を運行開始できる。東京近郊でみると、そもそも横須賀線の品川―横浜間は品鶴線と呼ばれた貨物専用線であった。横須賀線は当初、大船から東京までは東海道本線に乗り入れる形式だった。しかし東海道本線の運行本数を増やすため、横須賀線を品鶴線経由に分離したというわけだ。

 埼京線も山手線と並走する山手貨物線を旅客用として転用した。武蔵野線も本来は貨物列車の都心通過をとりやめて迂回させるための線路だった。東京通過車両の迂回ルートという意味では圏央道と同じコンセプトである。

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