神田エリアの再開発、「ワテラス」に見る地域コミュニティの再生ストーリー(3/4 ページ)

» 2013年04月26日 08時00分 公開
[吉村哲樹,Business Media 誠]

学生を巻き込んだエリアマネジメント活動を展開

 ワテラスのもう1つの大きな特徴が、「エリアマネジメント」に対する取り組みだ。エリアマネジメントを簡単にいえば、住民や事業主、地権者などが主体となり、自主的に取り組む街作り活動のことを指す。現在このエリアマネジメントが、地域活性化のための新たなスキームとして注目を集めており、実際に全国各地で取り組みが進められている。

 ワテラスでも、このエリアマネジメントを推進するための専門組織「一般社団法人淡路エリアマネジメント」が設けられている。その理事の1人が、地元の老舗そば店「かんだやぶそば」当主の堀田康彦さんだ。同氏は、ワテラスにおけるエリアマネジメント活動の意義について次のように述べる。

 「再開発は決してゴールではなく、新たな地域コミュニティ作りのスタートだと考えています。そのためには、再開発後のエリアマネジメントがどうしても必要だと考え、関係各所と相談したうえで社団法人の設立に至りました。ワテラスは、『神田淡路地域の人情・情緒を引き継ぎ、大きなコミュニティをはぐくむ』というコンセプトを掲げています。社団法人では、地域住民と新住民、就業者、さらには学生がワテラスを中心に交流することで、地域コミュニティがさらに活性化することを目指します」

 先ほど紹介した地域コミュニティ施設「ワテラスコモン」が設けられているのも、このエリアマネジメント活動の取り組みの一環である。ワテラスコモン内に設置されたサロンやギャラリー、ホール、ショップなどが、今後の地域コミュニティ活性化の中心となることが期待されているのだ。

ワテラス 学生マンションに住む二瓶太一さん(左)と大城義弘さん

 また、このエリアマネジメント活動の一環として、全国初となる極めてユニークな取り組みが進められている。地域コミュニティの活性化に、学生の力を積極的に生かそうというのだ。学生用マンションが設けられているのもそのためで、周辺相場より2〜3割安い家賃で学生に部屋を貸し出している。

 その代わり、入居する学生は地域活動への参加や、地域イベントの企画・実行など、地域交流・活性化のためのさまざまな取り組みに参加してもらう。すでに学生によって地域情報誌の企画・発行やイベントの企画など、さまざまな活動が始まっているという。

 プレス向け説明会では、入居学生を代表して日本大学理工学部建築学科2年生の大城義弘さんと、慶應義塾大学法学部政治学科3年生の二瓶太一さんが挨拶に立った。

 「私たち学生にとって、こうして下宿先の地域の方々と直接交流を深める機会は、ほかではなかなか得られません。ぜひ自分を成長させるための糧にするとともに、地域にできるだけいろんな形で貢献できればと考えています」(大城さん)

 「学生による地域コミュニティ活動はほかにも数多くありますが、ワテラスは実際に自分が住む地域と長い時間を掛けてじっくりかかわれる点が特徴だと思います。ぜひ、今後の地域コミュニティ活性化の礎になれればと考えています」(二瓶さん)

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