――パッケージのデザインが斬新です。他の商品は派手な色が多いのですが、「澄みきり」は銀色がメイン。社内から反対の声はなかったでしょうか?
土屋:経営会議のときには、簡易の棚をつくりました。なぜならパッケージだけを見ると、「大丈夫か?」といった不安の声が出てくるかもしれません。でもお客さまは店の棚に並んでいるモノを買うので、そうした状況をイメージをしやすいように棚をつくりました。
その日の経営会議は13時から始まるので、部下にはこのような指示を出しました。「午前中に棚がつくれるような材料を買ってこい」と(笑)。部下が図面を描いて、発泡スチロールを材料に棚をつくりました。そして経営会議の場に棚を持ち運びました。それを見た経営陣からは、特に異論がなかったので商品化が実現しました。
そのときに「こうしたデザインで……」といった声が出て採用していれば、これまでの商品とあまり変わらないパッケージになっていたでしょうね。
――キリンビールには新ジャンルとして「のどごし〈生〉」があります。「澄みきり」は同じカテゴリーですが、商品の違いをどのようにアピールされますか?
土屋:「のどごし〈生〉」は大きなワンボックスカーに乗っているお父さんをイメージしていて、週末は子どもが所属している野球チームを応援する。そして試合が終わったら、家に帰ってみんなで飲んで楽しむ、といった感じ。そうした世界観に憧れている人がこのブランドを支えています。
一方「澄みきり」の世界観は違います。お父さんではなく、「宮本武蔵」をイメージしてつくりました。“迷いなく、潔いよい人”が大きなテーマなので、お客さまによって好き嫌いがハッキリ分かれるのではないでしょうか。同じキリンビールの商品でもブランドの世界観が違うので、ファン層も違ってくると思っています。
開発時には自社調査を行っていて、「のどごし〈生〉」のファンは「『澄みきり』はちょっと……」といった声が多いことが分かりました。そうした声を聞いたとき、実は私たちはホッとしました。「のどごし〈生〉」が苦手という人が、「澄みきり」を好意的に受け止めてくれたのです。
「のどごし〈生〉」ファンの人はジョッキをキンキンに冷やして、ガーッと飲むのを好んでいるのではないでしょうか。しかもたくさんの人と一緒に飲むといったイメージがあります。一方の「澄みきり」は、仕事が終えて飲む。そして1日の気持ちを浄化する……といったイメージでつくりました。
とにかく飲んでいただければ分かると思うのですが、この2つの商品の味は全く違いますので、ファンの住み分けもきちんとできるのかなと思っています。
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