「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」
先週末、ロンドンで開かれたG7財務相・中央銀行総裁会議。日本は、G20のときと同じ立場を繰り返した。日銀が実施している超金融緩和は円安を狙っているわけではなく、10年以上にわたって続くデフレからの脱却、すなわち国内経済の刺激を意図したものである、と。そしてG20のときと同様に、他の6カ国は暗黙の了解を与えた。
日本にとって残された課題は、いかにして経済を立て直すか、である。一昔前のように、輸出主導で経済回復というのでは、他の国も納得はしない。やるべきは日本が規制を改革し、市場を開放して、世界各国とWin-Winの関係を築くことだ。それがあって初めて日本の主張が認められる。
しかし実際のところ、先進国にとっての大問題は日本ではない。欧州経済をどう立て直すのか、それが目の前にある最も大きな課題である。欧州委員会は5月初め、2013年のユーロ圏実質成長率を下方修正し、全体ではマイナス0.4%とした(参照リンク)。牽引役のドイツも2013年は0.4%とほぼ横ばい、ギリシャはもちろん、スペイン、イタリア、フランスもマイナス成長と見通している。そして12%超という現在の失業率の高さを考えても、回復はそう容易ではない。
それだけに米国などからすれば、なぜ財政が健全なドイツを始めとする国が、財政出動をしてでも景気を回復させようとしないのか、ということになる。ドイツのショイブル財務相は、このG7の会議に先立って、「重要なことは信頼度の回復であり、それがなければ経済も回復しない」と財政健全化路線を堅持することを改めて明言した。
財政出動による景気刺激が先か、財政緊縮による健全化が先か、という議論はいまだに決着がついていない。ただ最近は、財政出動派がやや有利なようだ。それは緊縮派の理論的支柱であったハーバード大学のラインハルト、ロゴフ両教授の論文に計算ミスが見つかったためでもある。この論文のポイントは、公的債務のGDP(国内総生産)比が90%を超えると経済成長率が落ち込むというものだが、どうもその根拠がややあいまいになっている。
そのため最近は「とにかく経済成長を」という論調が明らかに強くなっている。代表的な学者といえば、ノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のクルーグマン教授だ。
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