この一件で、井笠鐡道バスが衰退した理由のひとつが分かった。利用者の目線が足りないのだ。知っている人だけが乗ってくれたらそれでいい、という姿勢のようだ。通学の高校生は学校や地域の先輩からバスの乗り方を教わるだろう。通勤客もそうだ。バスに乗りなれた人なら、どんなバス停だって分かる。しかし、旅行者にとってはとっても不便だ。
ここは閑散区間であり、目的地も有名観光地ではない。私がマイノリティである。そんな人間にいちいち配慮できるか、という考えかもしれない。しかし、バス停に路線図を掲示し「ここに停まるバスが、この先どのバス停を経由するか」という案内は、常識の範囲ではなかろうか。井笠鐡道はそれすらできていなかったのではないか。旅行者だけではなく、この地域でふだんはクルマを使う人たちも、このバスがどこを通るか知らないかもしれない。
バス停は簡素な施設であっても、乗客との大切な接点である。バス路線がありますよ、という広告塔でもあるはず。ただし当時は井笠鐡道から中国バスが運営を引き継いだばかりで、路線の再編成も行われていた。もしかしたら、一時的に古い路線図を撤去していたかもしれない。しかし、暫定運行のバスの時刻を貼るなら、そこにもうひとつ手間を加えて、その路線だけでも路線図を貼ればよかったのに。
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なぜ「必要悪」の踏切が存在するのか――ここにも本音と建前がCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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