井笠鐡道バスを継承した「井笠バスカンパニー」は中国バスの100%出資の会社である。中国バスは岡山県の両備グループの一翼である。両備グループの社長であり、「井笠バスカンパニー」の社長でもある小嶋光信氏は、地方の公共交通問題を熟知し、中国バスや「たま駅長」の和歌山電鐵を再生させた人物である。それだけに、バス停の路線図の件は残念だった。しかし、4月になってWebサイトがきちんと整備されたところを見ると、今は各バス停にもきちんと情報が整備されていることだろう。
井笠鐡道の破たんは、財務や労使関係など、経営方針による原因が大きい。乗客減については過疎化や少子化など外的な要因もある。しかし、細かいところではあるが、「利用者に対して真摯に向き合っていたか」という部分も疑問だ。これは両備グループや自治体などでも検証されたはずで、今後は乗客を増やすための企画が実施されていくだろう。5月20日の山陽新聞の報道によると、笠岡市は現在の赤字を負担するにあたり「バスに乗ってもらえるような対策について、まちづくりも含め検討していく」とコメントしている。
バス停に路線図が掲示されていないなど、本来しておくべき施策がない。こうした部分に気付かないバス会社は怠慢と言われても仕方ない。しかし、これだけではなく、駅やバス停の分かりやすさ、公共交通機関の使いやすさについて、鉄道会社やバス会社自身が気づかない部分もあるだろう。大手私鉄では沿線の利用客から定期的にモニターを募集して意見を聞くなどの努力をしている。これに加えて、第三者機関による「使いやすさの判定やアドバイス」があれば、公共交通機関はもっと品質を上げられそうだ。
バリアフリーに関する調査やアドバイスなどを行う公益財団法人「交通エコロジー・モビリティ財団」によると、鉄道・バス事業者全般について「一般利用者の使いやすさに関する調査」を実施したことはないという。一方、内閣府は2009年に「歩いて暮らせるまちづくりに関する世論調査」を実施し、利用者の気持ち、使いやすさについてまとめている。
公共交通機関の使いやすさを判定し、アドバイスする立場は、国土交通省だろうか。鉄道会社、バス会社が「客観的なサービス評価」を依頼できる機関があり、その結果を反映できれば、電車やバスはもっと使いやすくなるかもしれない。
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