ローカル線の救世主になるのか――道路と線路を走るDMVの課題と未来杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)

» 2013年09月06日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

国土交通省「DMVの導入・普及に向けた検討会」で現状が明らかに

 JR北海道が開発したDMVについて、もっとも早く手を上げた鉄道会社は兵庫県の三木鉄道だった。2006年1月だ。第3セクターの三木鉄道の赤字は三木市の財政を圧迫し、存廃が次期市長選のテーマになるほどだった。そんなとき、存続派の現職市長が起死回生のアイデアとしてDMV構想を立ち上げた。まだJR北海道でさえ営業試験をしていない時期だ。しかし、この市長は翌月の市長選で三木鉄道廃止派の候補に落選する。新市長はDMV案を「バスよりコストがかさむ」として却下。公約通りに三木鉄道を廃止した。

 同年4月、宮崎県の神話高千穂トロッコ鉄道はDMVによる鉄道路線復旧を目指した。この路線は第三セクターの高千穂鉄道が運行していたが、高千穂鉄道は2005年9月の台風で被災し全線運休。復旧のめどが立たず、そのまま廃止という方向となった。神話高千穂トロッコ鉄道はこの路線を継承する目的でつくられた。しかしDMVは導入されず、路線復活はかなわなかった。現在は神話高千穂トロッコ鉄道の後継組織、高千穂あまてらす鉄道が廃線の一部で保存鉄道を運営しつつ、路線復活を目指している。

 JR北海道でさえ実用化しない段階でのDMV導入案は苦し紛れに見える。しかし2006年6月、自民党の国土交通部会はDMVについて国が支援すべきと提言。これを受けて国土交通省は南阿蘇鉄道の実証実験を支援し、同時に幅広く地方公共交通を支援する新法の法案に着手。これが後に「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」となった。その後、各地でDMV導入の機運が高まっていく。JR北海道もDMV車両を貸し出すなど協力している。

 DMVについては、ローカル線の導入計画ばかりが報じられ続報が少ない。しかし、今年2月に国土交通省が「DMVの導入・普及に向けた検討会」を設置し、今までのDMVに関する動きが公開された。DMVはJR北海道や国の研究開発支援によって、現在も実用化へ向けて開発や試験が続けられていた。

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