本連載は、村形聡著『会社にお金が残る 社長のための「非常識な会計」のルール』(日本実業出版社)から一部抜粋、編集しています。
「決算書」の数字を鵜呑みにしてはいけない! 決算書の数字だけを見て「ウチの会社は儲かっている」「節税しよう」などと勘違いしてはいけません。決算書の数字は経営の実態を映していないのです。そもそも決算書とは、税務の申告や投資家への報告のために作られるもの。投資家などいない中小企業にとっては、あまり意味がありません。実際、儲かっているはずなのに「お金がない」と感じている社長は多いのではないでしょうか?
本書では、実際の決算書の数字を使いながら、会社の実態が見える新しい会計、会社にお金を残す会計のルールを提案! 例えば「新車の法廷耐用年数は6年。減価償却費も6年で計算するが、実際は3年で買い替えるなら、3年間で車1台分を貯める必要がある」「借金は、税引後の利益からしか返済できない。つまり、利子や借り入れた金額だけでなく、儲けにかかる法人税も計算に入れておく必要がある」など、これまで見逃してきた指摘が盛りだくさん。本書のルールにのっとって収支計画を立てれば、必ず会社にお金が残り、儲かる会社に変われます。
僕は税理士を本職としていますので、経営者のみなさんがいかに税金を嫌っているか、骨身に染みて理解しているつもりです。仕事と割り切ってさまざまな節税プランも提案しますし、そちらの評判も上々です。
しかしながら、あえて言わなければならないことがあります。それは「本当に儲けたかったら、税金から逃げるな」ということです。
職業柄、こういうことを言うのは本当に心苦しいですが、節税なんて、本当のところは、何もいいことはないのです。
例を挙げて説明しましょう。法人税というのは、細かいことを抜きにすれば会社の利益に対して税率を掛けて、税金を計算します。利益が増えれば税金も増え、利益が減れば税金も減るという仕組みです。
このため、節税というのは、平たく言うと「利益を少なくする」という作戦になってきます。利益を少なくするためには、経費を増やさなければなりません。そこで社長は決算が近づくと、経費を増やすためにせっせとお金を使おうとします。そして、自分の満足のいくレベルまで利益を落として、税金を減らすわけです。
実は、この節税によって不幸なことが起こります。仮に利益が500万円あったとすると、法人の税金はおよそ40%の200万円となりますから、手元に300万円のお金が残ることになります。一方、この200万円の税金をゼロにしようと思えば、利益のほうもゼロにしなければなりませんので、500万円の経費が必要になります。そして大概の場合、500万円を使い果たそうとしてしまいます。
そうすると、たった200万円の税金を納めたくないばかりに、500万円ものお金を使い果たすことになります。同じ状況で普通に税金を納めれば300万円のお金が手元に残るのに、500万円がなくなってしまうのです。これは、不幸な話です。
もちろん、必要なことにお金を使うことまで無駄遣いだとは言いません。買っておきたいものがあれば決算の前に買っておいたほうが、税金面でお得なのは間違いありません。でも、多くの経営者は税金が嫌で嫌でたまらないので、必要のないものにまでお金を使う傾向にあります。胸に手を当てて考えてみてください。あなたも、そういうことをしていませんでしたか?
正直なことを話せば、僕も独立して数年間は税金が嫌いで、ずいぶんと余計なことにお金を使っていました。「あんなことしなければ、ウチの事務所はもっと成長していたのに……」と思います。後の祭りですけどね。
さて、ここまでの説明で「なるほど。これからは節税をしないで税金をたっぷり納めよう」と、気持ちを改めた人は、僕の予想では皆無でしょう。こんな説教臭い話で納得するほど経営者は甘くないですよね。ですから、この次はもっとおもしろい話をしなければいけませんね。
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