30年以上にわたり生活者を研究し続けてきた「博報堂生活総合研究所(生活総研)」。同研究所の主席研究員である吉川昌孝氏が、生活総研オリジナル調査「生活定点」などのデータを用いて、“時代の今とこれから”を読み解きます。
「生活定点」とは、1992年から20年間にわたって隔年で実施している時系列調査。衣食住から地球環境意識に至るまで、人々のあらゆる生活領域の変化を、約1500の質問から明らかにしています。現在、生活総研ONLINEで20年間のデータを無償公開中。こうした生活者データから得られる“ターゲット攻略のヒント”はもちろん、ビジネスパーソンの日々の仕事に役立つ“データを読み解く技術”などもご紹介していきます。
博報堂生活総合研究所研究員、および動態研究グループ・グループマネージャー。1965年愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒、同年、博報堂入社。マーケティングプラナーとして得意先企業のマーケティング戦略立案業務を担当。2003年より生活総合研究所客員研究員となり、2004年より生活総合研究所に異動。2008年より未来予測レポート『生活動力』のプロジェクトリーダー。著書に『亞州未来図2010−4つのシナリオ−』(阪急コミュニケーションズ・共著)、『〜あふれる情報からアイデアを生み出す〜「ものさし」のつくり方』(日本実業出版社)などがある。2008年より京都精華大学デザイン学部非常勤講師。
今年8月、生活綜研(上海)のメンバーと協働してレポートを発表しました(参照リンク)。「消費意欲指数」という同一指標で日中6大都市(東京、名古屋、大阪、北京、上海、広州)の生活者に、消費について聞いたところ、消費意欲指数の点数、欲しいモノ・サービスのある人の比率ともに、日本よりも中国が非常に高くなりました。生活者の旺盛な消費行動とともに、日本と中国それぞれの消費スタイルの違いもくっきりと浮かび上がってきました。今回はその内容についてご紹介します。
日中の生活者がそれぞれ具体的に何を欲しがっているのか。下の表は日中の欲しいモノ・サービスのトップ20です。それぞれの国のみでランクインしたモノ・サービスには網掛けがしてあります。
トップ3は日中ともに「衣類」「旅行」と似ているのですが、5位以降を見ていくと、それぞれに特徴的なモノ・サービスが現れています。その最たるものが中国6位の「腕時計・アクセサリーなど」、そして同じく18位の「金製品」です。16位の「自動車」「住居など不動産」も中国特有で、ともに中国生活者の高い消費意欲を感じさせる結果となっています。
特に「金製品」の回答はほとんど「黄金」と表記されていました。実際に目にしてみると中国の生活者の消費意欲の高さをよりリアルに、より強烈に感じることになりました。これまで長く生活者の声に耳を傾けている私ですが、少なくともこの10年、日本の生活者から「金(Gold)が欲しい。」と明確に主張した声は聞いたことがありません。さらになぜ欲しいのか、その理由まで追ってみるとこんな声がありました。
「金の値段が下がったし、給料も上がったし、妻に金のネックレスを買ってあげたい。妻も喜ぶし、投資にもなるので、一石二鳥」(北京・男性52歳)、「金が安い。来月からもらえる年金でネックレスを買いたい」(北京・女性51歳)
加えて「投資が実ったので○○が欲しい」「株でもうけたので……」「宝くじでお金が入ったので……」など、ただ単に高いモノを買いたいというのではなく、投資的な意味で高価格商品の購入を検討していることがうかがえます。
生活綜研(上海)の研究員も「確かに経済成長はしているが、それとともに生活コストも年々上昇している。給料以外にいかに自己資産を増やしていくかは、生活防衛策のひとつ。『金製品が欲しい!』という、いわゆる“成金的”な行動というだけではない」と解説してくれました。
このコラムでは「中国人はGCB」としていますが、その最初の文字G(Gold)は、生活コスト上昇に対する生活者の対応策を表しています。
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