子どもが独立したあと、住んでいる家の部屋を活用しきれていない……そう考えているシニア層はどれくらいいるのだろうか。60歳以上の男女に聞いたところ、81.9%が「子どもが独立したあと、活用しきれていない部屋がある」と答えていることが、矢野経済研究所の調査で分かった。
子ども独立後に活用しきれていない部屋数は「2部屋」が最も多く34.4%、次いで、「1部屋」が25.3%、「0部屋」(活用しきれていない部屋はない)が18.1%、「3部屋」が15.3%と続く。
現在住んでいるマイホームの住み替え意向については、「住み替えたくない」が54.7%と最も高く、「住み替えも考えたいが住み替えられないと思う」(22.6%)、「将来的には住み替えも考えたい」(19.5%)、「住み替えたい」(3.2%)となった。積極的に住み替えたいという回答は少ないものの、潜在的な住み替え需要は全体の42.1%、全体の4割強を示している。
シニアが住み替えを考えたいと考える理由は、「家の老朽化」が最も多く51.2%。「家が広すぎる」33.8%、「バリアフリーの必要性」30.3%、「防災面に不安がある」22.0%、「階段の上り下りが大変」21.7%と続く。
住み替えたいが住み替えられない、という人に「住み替えられない理由」を聞くと、「新たに購入資金を工面できない」が52.2%、「住み慣れた地域を離れたくない」48.9%、「長年住んだ家を手放したくない」37.1%、「将来に使える資金をとっておく必要がある」25.8%となった。
この調査結果に対し、シニアが家を住み替える場合、理想の住み替え先は「安(安全・安心)、近(駅近・住み慣れた地域)」、「小(コンパクトな住まい)」であること、と話すのは、東北大学特任教授で『シニアシフトの衝撃』や『親が70歳を過ぎたら読む本』などの著書がある村田裕之氏。
「シニアが住み替えるのであれば、体力的に健康で、判断力があるうちに行うべき。先手の対策をとっておくことが、自分のためにも、家族のためにもなる。資金調達が解決されるサービスがあれば、住み替えを検討してもよいのではないか。ただ、賃貸関連の支援策のうち、公的支援は手続が煩雑で使いにくい。民間が主体となってサービスを推進していったほうが良いだろう」(村田氏)
インターネットによる調査で、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の築10年以上の戸建て住宅に住み、子どもが独立した60〜75歳の男女823名が回答した。調査期間は2013年7月。
1. 適切な住み替えは、自分のためと家族のためになる
→仮に要介護状態になっても、安心して生活できる機能をあらかじめ得られる
→身の回りの整理は、残される家族の体力的、心理的負担を減らす
2. 買い物、病院、駅に「近い」ところにする
→高齢になり健康を害したときに、一番必要なのは買い物、通院など外出の利便性
→なるべく駅やスーパー、病院に「近い」場所を選ぶことが重要
3. 高額な新築マンションより、中古マンションのリフォームで「安く」手に入れる
→新築は若年世代向けが奥、間口が狭いなど要介護時に不具合が多い
→中古リフォームにより、バリアフリーなど機能的で、新築より「安く」住み替え先を手に入れ、将来の生活資金をなるべく残す
4. コンパクトな物件を選ぶ
→郊外の一戸建ては、高齢になると階段や庭の手入れなどが大きな負担になる
→夫婦世帯あるいは一人暮らし世帯に多くのスペースは不要
5. 住み替えは体力も判断力も十分にあり、健康なうちに行う
→体力、判断力が衰えてからでは引越はしんどい
→遅くても65歳を過ぎたら住み替えを計画し、情報収集を始める
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