進むクラウド化、デジタル化―最新会計ソフト活用で業務効率アップ

基本中の基本、年末調整の書き方を理解しよう知らなきゃ損するサラリーマン節税(2/4 ページ)

» 2013年11月14日 08時00分 公開
[奥川浩彦Business Media 誠]

サラリーマン節税の最重要ポイント「扶養控除」って何だ?

 まずは「平成26年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」から見ていこう。アレッと思われた方がいるだろう。現在は平成25年(2013年)。申告書は平成26年分となっている。裏面を見ると「この申告書は、平成26年の最初の給与の支払を受ける日までに、給与の支払者に提出してください。」と書かれている……全然、年末じゃないじゃん。

 本来は年始に提出し、配偶者や扶養親族の状況などを加味して1月の給与から天引きする所得税を算出するための申告書だ。年の途中で結婚したり子どもが生まれたりした場合、年末に修正をして税額を年末の給与で調整する。しかし、現実的には申告する内容がコロコロ変化する人は少ない。事務作業を軽減する意味合いもあり、翌年分(平成25年なら平成26年分)の申告書を記入するだけにとどめる会社は少なくない。

 では、実際に記入してみよう。独身で親の面倒をみていなければほとんど書くところがない。名前などを書く欄の下に「あなたに控除対象配偶者や扶養親族がなく、(中略)以下の各欄に記入する必要はありません」とあるように会社の所轄税務署と自分が住む市区町村、会社名と住所、自分の名前と生年月日、住所などを記入したら完成だ。「簡単に終わる=税金が少なくならない」とやや寂しい結果となる。

 結婚している人、子どもがいる人、親の面倒をみている人は、この申告書がサラリーマン節税の最重要ポイントとなる。記入例を見ながら説明していこう。安倍進次郎さんには奥さんと大学生の息子、中学生の娘がいる。さらに父親も同居している。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記入例

奥さんが専業主婦か、収入が103万円未満の場合は「配偶者控除」あり

 上段の会社名や氏名などは問題ないだろう。結婚している人は「A 控除対象配偶者」欄に奥さんの名前、生年月日、住所、所得を記入する。所得は平成26年の見積額だ。来年の所得が分かるわけがないと思う人もいるだろうが、あくまで見積額なので、専業主婦であれば0円、毎年パート収入が100万円くらいであれば、

  • 100万円(収入)−65万円(給与所得控除)=35万円(所得)

と計算し、35万円と記入する。収入が65万円以下であれば所得は0円だ。

 なお、奥さんの収入が103万円を超える場合は控除対象から外れるので記入しない。共働きで奥さんもしっかり稼いでいる場合は控除対象外となるからだ。

16歳以上の子どもや親を養っている場合は「扶養控除」あり

 「B 控除対象扶養親族」は16歳以上の子ども、親などを記入する。16歳以上となっているが、判定時期は平成26年の年末なので、2013年(平成25年)に15歳の子どもも対象となる。申告書に「平成11年1月1日以前生まれ」と書いてあるので、日付で判断したほうが分かりやすい。

 ちなみに日本の法律では誕生日の前日に年齢が上がることになっている。1月1日生まれの人は前日の12月31日に年齢が1つ上がるので、平成11年1月1日生まれの人は平成26年の12月31日に16歳になるということだ。

“だいたい”大学生ならば「特定扶養」でさらに優遇あり

 息子である安倍真三くんは平成7年6月生まれで現在18歳。2014年(平成26年)には大学に進学し、年末には19歳となる。19歳から22歳の子どもは特定扶養親族となるので、該当欄に○を記入する。詳しくは後述するが特定扶養親族は税的優遇が得られる。ザックリ言うと大学生の子どもがいると学費が掛かるから税金を減らしましょうということだ。

 ところが、特定扶養親族の条件は19歳以上23歳未満。誕生日で記すと平成4年(1992年)1月2日から平成8年(1996年)1月1日生まれの人が対象となっている。平成26年末に大学生の人はストレートに進学していれば平成4年4月2日から平成8年4月1日生まれ。並べて比較すると、

  • 平成4年1月2日〜平成8年1月1日生まれ=特定扶養親族
  • 平成4年4月2日〜平成8年4月1日生まれ=大学生

と微妙に差がある。

 個人の所得税は1月から12月を対象期間としている。なので3月決算、4月昇給の会社に勤めていても年収は1月から12月で集計する。特定扶養親族も1月から12月の年単位で判定している。これに対し学年は4月から翌年3月を1年としているので対象期間に差が発生してしまうのだ。

 これで損をするのは早生まれの人だ。早生まれの人は大学1年の12月にはまだ18歳のため特定扶養親族の税的優遇が受けられない。22歳になると卒業して社会人になり扶養控除の対象から外れる。結局3年間しか優遇が受けられないことになり、同学年の4分の1の人が損をするという、かなり不公平感に強い税制となっている。是正するのは簡単なことだと思うのだが、長年放置されているのでその気はないようだ。

 子どもがアルバイトをしている場合も奥さんと同様、年103万円以下の収入であれば所得は38万円以下となり扶養親族の対象となる。仮に大学を卒業し就職難でフリーターなどをしていても所得が38万円以下であれば扶養親族となるので、父親は少しだけ税的な優遇を受けることができるがあまり嬉しくはないだろう。

70歳を超えた親を養っていれば税的優遇が大きい

 安倍進次郎さんは自身の父親である安倍純一郎さんと同居している。純一郎さんは昭和16年(1941年)生まれで平成26年の年末には73歳。70歳を超えているので「老人扶養親族」となる。加えて進次郎さんの直系で同居しているので「同居老親等」に該当するため税的優遇も大きい。

 公的年金は2カ月で26万円、年156万円となっていて、120万円の公的年金控除額を差し引くと所得は36万円となりギリギリだが扶養の対象となる。なお、公的年金控除額は65歳未満は108万円なので注意が必要だ。また、父親が亡くなり母親の面倒をみている場合はさらに注意が必要となる。母親に支給されている遺族年金は公的年金ではないので、仮に158万円を超えても所得とはならず控除対象扶養親族となる可能性が高い。

 筆者自身、二十数年前に父親が亡くなり会社の総務のオバサンに「母親を扶養家族にしたいのですが?」と相談したことがある。母親の年金額は年180万円ほどで、オバサンの回答は「年金が多いので扶養家族にはなれません」。当時の筆者は公的年金とか遺族年金という言葉も知らなかったのでそれで話は終了。

 それから2度転職し、遺族年金は所得にならないと知ったのは独立して少し経ってから。数十年に渡り税金を余計に納めていたことに気付きガッカリした。税金のことを知らない筆者が「母親を……」と聞いた時点で「それは遺族年金ですか?」と総務のオバサンが機転を利かせてくれたら結果が違っていたと思っている。

16歳未満の子どもは「住民税に関する事項」欄に記入

 「B 控除対象扶養親族」の欄は16歳以上が対象だ。以前はすべての子どもが控除対象扶養親族だったが、今では16歳未満の扶養親族を最下段に設けた「住民税に関する事項」欄に記入することになっている。きっかけは民主党時代の「子ども手当」だ。だがその正体は「16歳未満の税制優遇をなくしたため、結果的に中学生以下の子どもがいる家庭は増税になった」というもので、この欄は負の遺産といえる。

 年齢の判定時期は平成26年末で16歳未満であること。誕生日で表すと平成11年1月2日以降に生まれた子が対象となる。2014年(平成26年)に中学3年生になる子どもまでが対象だが、年と学年の差によりここでも平成11年1月2日から4月1日に生まれた高校1年生が含まれ、早生まれという理由で税的優遇が受けられないことになる。

 これで「平成26年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の主な記入は終了だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.