「クルマを使ったプロモーションが刺さらない」――レクサスがたどりついた結論とは?プレミアムブランドの育て方(4/5 ページ)

» 2013年12月13日 09時00分 公開
[岡田大助,Business Media 誠]

『日本の良さ』を味わえるクルマのブランドがありますか?

岡田: なるほど、ブランディングの方向性が見えてきました。でも、「イケてるね」というものは、それを受け取る人によって異なると思います。具体的にはどのようなものやサービスを提供しているのでしょうか?

河辺: 私が所属しているレクサスブランドマネジメント部という部署は、社長の豊田章男の肝いりで2012年6月に新設されました。社長以下、レクサス社員は「日本の良さ」というものを大切にしています。「本当に『日本の良さ』を味わえるクルマのブランドがありますか?」と問われたとき、「それってないかもね」というところから、ブランディングを再スタートさせています。

岡田: 日本の良さですか?

河辺: インターセクトで提供する食事や飲みものにしても、これまで説明したように「バブリー」であればいいわけではありません。「なぜ、それがここで出てくるのか」ということに意味があるものでなければなりません。「ゴージャス」ではなく「本質的」なものをしっかり出していきたいのです。

 例えば、シンプルに「非常においしい」でもいいですし、「『日本の良さ』が分かる素材や調理法にこだわった」とかでもいいんです。カトラリー(食器)にしても、ギンギラギンなシルバー製を使うことが重要ではない。「それを使うお客さんが一番使いやすいデザインって何かな?」を考え、そのためにオリジナルの磁器を焼きました。このデザインにもスピンドルグリルのモチーフが入っていて、レクサスの世界観を共有しています。

INTERSECT BY LEXUS

 2階のショップで販売しているライフスタイルアイテムは「CRAFTED FOR LEXUS」といって、日本各地の若き匠とのコラボレーションで生まれた商品群です。メガネや帽子、シャツ、バッグ、レザー製品、漆木工製のUSBメモリーなど14ブランド、18アイテムの「本当にいいもの」をそろえました。

INTERSECT BY LEXUS

 スペース全体のデザインはインテリアデザイナーの片山正通さん(参照リンク)と一緒に作り上げていきました。「あなたにとって一番気持ちのいい空間を考えて」というオーダーを出してしまったものだから、片山さんも非常に悩んだそうです。だからこそ、彼が今、最高だと思うもの、理想的だと思うものが、あの空間で表現できているのだと思います。

岡田: 商業デザイナーにとって、フリーハンドに近い形で表現の仕事ができるというのは珍しいことですよね。

河辺: そうですね。ふつうは発注主から「これやって、あれやって、それやって」という要望があって、その中でミニマムあるいはマキシマムに自分の色を出すという感じでしょうか。

 でも、レクサスは一緒に考えてみましょうというスタンス。そして、それをインターセクトを訪れるみなさんと共有したいと思っています。この空間から新しいクリエイティブが生まれて、この空間で出会った仲間と新しいプロジェクトを立ち上げて、という「気」の循環が生まれてくると、「イケてるじゃん、レクサス」ってなると思うんです。

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