2014年、日本の株価に影響を与えるのは中国か、それとも中東か藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2014年01月08日 07時30分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 アベノミクスの第1の矢、第2の矢(金融/財政政策)で明るい気分となった2013年。安倍総理も出席した東京証券取引所の大納会は、年初以来の最高値で終わった。しかし麻生副総理が顔を出した大発会は、波乱含みの展開で日経平均株価は382円も下がった。普段ならご祝儀相場で上がって始まる大発会だが、2014年は6年ぶりに下げて始まった。気分は明るくなっているとはいえ、「そう簡単に日本経済が軌道に乗るわけではない」という警戒があったのかもしれない。

photo 安倍総理が出席した東京証券取引所の大納会は、年初以来の最高値で終わった(出典:首相官邸ホームページ)

 リスクの芽はいくつかある。国内で言えば、消費税の増税よりもアベノミクスの第3の矢――いわゆる“民間投資を喚起する成長戦略”が重要だろう。具体的な方針はなかなか出てこないが、安倍首相は2014年6月に発表すると明言している。

 その成長戦略が国内外の投資家を納得させるものでなければ、株式市場では失望売りが起こる可能性が高いが、逆にさまざまな規制で阻害されていた潜在的な成長力を解き放つものであれば、買いに動くだろう。

不安定な中東情勢に原油相場高騰のリスク

photo 米連邦準備理事会のイエレン次期議長(出典:FRB)

 しかし私たちは国内だけを気にするわけにもいかない。世界には大きなリスクがいくつも存在しており、そのうち1つでも実現すれば日本経済が大打撃を受けるのは間違いないからだ。目下のリスクとして挙げられるのは、中国のシャドーバンキング、欧州圏のゾンビ銀行、そして中東情勢だ。

 幸いなことに、世界経済をリードする米国はかなり明るい見通しだ。金融政策のかじを取る米連邦準備理事会(FRB)は議長が交代するが、イエレン次期議長は急激な引き締めを行わない「ハト派」と見なされている。

 とはいえ、現在長期金利が上昇し始めているのは気にかかる。物価上昇率が目標の2%に届かないうちに長期金利が上がると、企業の投資意欲を削ぐことになり、回復しつつある住宅市場に影響が出てしまう。

 米国絡みでは中東情勢も大きな問題である。オバマ大統領はシリアの化学兵器をめぐる1件で、すっかり中東での影響力を失ってしまった。同盟国であるイスラエルやサウジアラビアから(少し大げさに言えば)見放されたのだ。もちろん、この背景には米国のシェール革命がある。シェールオイルやシェールガスの開発によって、米国は中東からのエネルギー輸入に頼らなくてもよくなった。

 しかしその分、中東はより不安定になっている。シリアの内戦はいまだに先が見えない情勢になっており、核開発をめぐるイランとの協議がイスラエルを納得させられるかどうかは分からない。

 また、イスラエルがイランの核の脅威がなくならないと判断すれば、単独で原子力施設を攻撃する可能性も残っている。イスラエルは過去にもイラクやシリアの原子力施設を攻撃した実績がある。そうなれば原油価格は暴騰し、日本にとっては円安と原油相場暴騰のダブルパンチを受けることになる。米国やロシアから原油を輸入する話は進んでいるものの、本格的に始まるのは2017年以降のことで、こうした脅威に間に合わない公算が高い。

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