土肥: 食の世界には革命的な技術で生まれたモノがいくつかあります。例えば、インスタントラーメンや缶詰なんかはそうですよね。レトルトカレーもその1つだと思うのですが、発売当時消費者に受け入れられたのでしょうか?
垣内: 残念ながら、苦戦しました。消費者からは「なぜこんなに保存ができるの?」といった声が多かったですね。
土肥: ヘンなモノでも入れているんじゃないの? といった声が多かったとか。
垣内: そうなんですよ。でも、きちんと殺菌しているので、体に問題はございません。会社は何度も何度も「防腐剤などは一切入れていません」と説明して回りました。
あと、価格が高かったんですよ。当時のうどんは1杯50円だったのですが、ボンカレーは80円。50円出せばおいしいうどんが食べられるのに、それよりもたくさんお金を出して、見たこともない“袋に入ったカレー”を食べようという人は少なかった。
土肥: 当時の時代環境として、「女性はきちんと料理をしなければいけない」という意識が、今よりも強かったのではないでしょうか。晩ごはんにレトルトカレーを出されたら、旦那さんは「なんだこれは? ワシにこんなモノを食わせるのか! 手抜きをしやがって!」などと言って、ちゃぶ台をひっくり返していたのかもしれない(苦笑)。
垣内: ご指摘のとおり、そんな時代だったと思います。いまでも年輩の人たちからは「旦那さんに、レトルトカレーを出すのは気が引ける」といった声を聞きますね。
ただ1970年代の日本は、核家族化が進んでいきました。そうすると、食事はそれまでの「家族団らん」というスタイルから「個食」になっていくんですよね。そうした時代背景もあって、徐々にレトルトカレーが支持されるようになりました。
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