どうすれば、地球上から飢餓はなくなるのか?――NGO「ハンガー・フリー・ワールド」のPR活動に迫る同情ではなく“共感”で啓発(1/2 ページ)

» 2014年02月25日 13時45分 公開
[小槻博文,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:小槻博文(おつき・ひろふみ)

合同会社VentunicatioN代表。ベンチャー企業の広報立ち上げ・自立運営を支援。1973年東京都出身。1996年早稲田大学卒業。外資系旅行会社でのウィーン駐在を経た後、約10年にわたり事業会社にて一貫して広報に携わる。その後ベンチャー企業の広報支援に関する起業を志し、1年半ほどPR会社にて新たな視点からの広報経験を積んだ上で、VentunicatioNを設立。


photo ブルキナファソでの青少年衛生啓発の様子

 世界には十分な食料があるにも関わらず、8人に1人が慢性的な栄養不足――つまり“飢餓”に苦しんでいると言われる。そのような状況を変えるため、バングラデシュ、ベナン、ブルキナファソ、そしてウガンダの4地域を対象に、飢餓の解決に向けた活動を進め、日本国内で飢餓問題に関する啓発活動を行うNGO(特定非営利活動法人)がある。それが今回紹介するハンガー・フリー・ワールドだ。

 ハンガー・フリー・ワールドは大きく「地域をつくる」「しくみを変える」「気づきをつくる」「若い力を育てる」という4つのテーマをもとに活動を進めている。このテーマに沿って同団体の活動を紹介しよう。

地域をつくる

 一言で“飢餓”と言っても、その原因は農業生産性や教育など地域によって異なる。そこでハンガー・フリー・ワールドでは栄養改善、教育、保育衛生、収入創出、ジェンダー平等、環境の6分野から各地域が必要とする支援を選び、住民たちが自ら活動を進められるように各種支援を行っている。

 ハンガー・フリー・ワールド広報の糟谷知子氏は、こうした一連の活動について「支援が無くなったら元の状態に戻ってしまった、では意味がない」と語る。「最終的には支援を必要としない、つまり地域が自立し、その状態を持続させて、発展していくことが重要です。なので、支部担当者が年に1、2回ほど現地に向かい、視察したり助言したりすることはありますが、普段は現地の方々が自分たちの問題として捉え、活動することを後押しする形を採っています」

しくみを変える、気づきをつくる

 「地域をつくる」が地域内での取り組みであるのに対し、環境整備など地域外からのアプローチも行う。「しくみを変える」は食料価格高騰や環境問題など、飢餓の原因となる地球規模の課題に対し、必要な政策や国際ルールが整備されるように、世界のNGOなどと協力して国際会議や政府機関などに提言を行うことだ。個人に対しても、暮らしや食生活と飢餓とのつながりを伝えている。飢餓問題を解決するために考え、行動を促す人を増やしていくため(気づきをつくる)だ。

若い力を育てる

 そのほか、若者ならではの力を飢餓の解決に向けて発揮し、未来の担い手として成長できるように、青少年組織である「ユース・エンディング・ハンガー」を通じた青少年育成にも取り組んでいる。

いかに“手触り感”や“空気感”を込められるか

 同団体では、こうした取り組みを推進する支援の輪を広げるために広報/PR活動に取り組んでおり、ターゲットを会員層、中間層、潜在層と3つに分けている。それぞれ会員層には継続的に支援をしてもらうこと、中間層には本格的な支援へとステップアップしてもらうこと、そして潜在層には、まず飢餓問題に気付いてもらい、問題意識を持ってもらうことを目的としている。

 ハンガー・フリー・ワールドでは、広報/PR活動を進めるにあたって、単なる活動報告では無機質なものになってしまうため、活動の成果をいかに“手触り感”や“空気感”を込めて伝えるかを意識しているという。

 ブルキナファソの事例がそのいい例だ。ブルキナファソの学校では、子どもが空腹だったり昼食のために一度帰宅したりするなど、なかなか授業に集中できる環境になかった。そこで給食事業を始めたところ、子どもが勉強に集中できるようになり、卒業率が大幅に改善された。これを目に見える形で伝えるべく、同団体は“卒業証書のコピー”を会員向けに送ったそうだ。

photo 生徒に授与した卒業証書のコピー
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