本連載は、丸幸弘著、書籍『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』(日本実業出版社刊)から一部抜粋、編集しています。
“PDCA”でイノベーションは起こせない。これからのビジネスは“QPMI”です。イノベーションを起こす魔法のしくみ「QPMIサイクル」とは、
Q(question) たった1人の崇高な問題意識や疑問
P(passion) それを解決したいという強い情熱
M(mission/member)周囲を巻き込んでプロジェクト化する環境を作る
I(innovation)結果として革新的なビジネスが生まれる
この4つです。
著者、丸幸弘は数々の革新的なビジネスをプロデュースし、自社内では「出前実験教室」など200以上のプロジェクトを同時進行させ、しかもそのすべてが黒字。そして、社員全員が理系の博士号or修士号を取得しているという異色の研究者集団企業「リバネス」の代表取締役CEO。
本書では、世界を驚かせるようなイノベーションを起こすためのしくみ“QPMI”を中心に、リバネス独自の取り組みと社内制度、そして具体的な事業内容を初公開。べンチャー起業家、新規事業立ち上げに携わる人、中小企業の経営者から未来を夢見る理系学生まで、広く読んでいただきたい1冊。
耳にタコができるほど聞くようになったこの言葉を、あなたは、どのような意味で受け止めていますか?
「どんなささいなことでもいいから、好きなことを見つけて起業しよう」
「旧態依然とした日本の組織は終わった。自分が輝く方法を見つけないと、時代に取り残されてしまう」
長年続く企業とそこで活躍してきたベテラン社員をあざ笑うかのように、組織を壊し、1人ひとりが独立して実力を発揮することが、あたかも理想的であるかのようなことを言う人がとても多い。
僕は、「個の時代」という言葉に、全く異なった解釈を提示したいと思います。それは、僕が農学の博士号を取得した科学者であることに関係があります。
「熱がなければ、化学反応は起きない」
これは、科学に携わる人なら誰でも知っている真実です。1つひとつの分子がぶつかり合うとき、それぞれの熱が小さければ、大きな力は生まれない。高い熱量を持った分子が出会うからこそ、そこに変化が生まれ、爆発的な破壊力を保ちながら連鎖し、さらに加速していく。
僕たちの会社「リバネス」は、この科学の大原則をビジネスに応用しようとする壮大な実験装置です。社員全員が理系の博士号もしくは修士号を取得した、研究者集団でもあります。
1人ひとりがバラバラに動くという意味ではありません。1人ひとりの社員が強い「熱」(passion)を持って動いてぶつかり、互いに化学反応を起こし合う状態を集団化することで、世界を変えるチェンジメーカーになれる。それが「個の時代」の本質であり、組織論の原則になりえると本気で信じています。
「イノベーションとは、世界を驚かせるような革新的な何かを生み出すことだ」
一方で、イノベーションという言葉に対するこうした考え方も、呆れるくらい世間に流布しています。僕は、イノベーションとは、革新が生まれること自体を表わす言葉だとは考えていません。
「世界を変える」とは、実はそれほど壮大な話ではないのです。自分だけが考えていたことを、みんながあたりまえのようにやり始めたら、それは世界を変えたことになる。あえて言えば、「あなたのおかげで世界がほんの少し変わること」がイノベーションだと思っています。
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