なぜ巨額な利益を生み出すのか、米国発「総合格闘技」のビジネスモデルを知る臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(3/4 ページ)

» 2014年03月20日 08時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

無料放送、ネット放送でも収益を確保 その手法と戦略とは

 テレビ関係から生み出される収益はPPVだけではない。ズッファと放映契約を締結する米国4大ネットワークの1つ「FOX」は、地上波、そして傘下CATV局の別枠でもUFCの試合と特別番組を無料で放送している。これらの放映権料としてFOXは年間9000万ドル(約91億1000万円)をズッファ側に支払っている。FOXとの契約期間は(延長オプションが破棄されたとしても)2018年まで持続されることから、ズッファにとって毎年コンスタントにこれだけの放映権料が入ってくるのはとてつもないプラス材料となるのはいうまでもない。

photo 選手育成ドキュメンタリー番組「The Ultimate Fighter」

 無料放送が持つ意味も大きい。地上波などで年間数回の大会を無料放送することで、大多数の一般視聴者へUFCブランドの認知普及とPPVへの誘導を図れるためだ。例を挙げれば、FOX傘下のCATV局 FOXスポーツ2で放送中の「The Ultimate Fighter(TUF)」というUFCの登竜門的な選手育成ドキュメンタリー番組が毎回とても高い視聴率を稼いでいる。同番組に出演する無名の選手たちには最後まで勝ち残るとUFCとプロ契約を結べる特典が用意され、デビュー後そのまま一気にスターダムへとのし上がるケースもよくある。その“昔から知っていた(自分が育てたと感じてしまう)”選手がUFCの大きな大会に出場するならば、PPVでも多くの視聴者の誘導を狙えるというわけだ。だからズッファは無料放送の番組制作に対しても妥協することはない。

 しかも近年のズッファは、ビジネスのベクトルをこうした米国内の収益だけでなく先に触れたように世界各国へと広げている。つい3年ほど前までのズッファはPPVと入場料(ゲート)収入を含めた米国内の総収益が総益の90%以上を占めていた。それが、MMAビジネスに詳しい関係者によれば「現在は、米国“以外”での収益が総益のうち70%を超えている」という。これは驚異的な数字だ。

 UFCの試合は現在145カ国で視聴が可能で、30以上のテレビネットワークによって放映されている。そのもとでズッファは各国の主要メディアと提携し、その国出身の契約選手を番組やライブイベントで露出させることによってUFCの認知度を広めている。DVDやオフィシャルマガジン、それにゲームの販売、スポンサーシップなど、周辺ビジネスのPR活動も各国で展開しているから海外戦略にも抜かりがない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.