さらには、EU諸国では地下経済がGDPに含まれ、そのほかの国では含まれないということになれば、経済を純粋に比較できないという議論が大きくなる可能性もある。
そもそも、違法な経済活動を把握するのは容易ではない。売春や麻薬密売だけでなく、人身売買や違法武器売買などをどう把握してGDPに入れるのか。ESAもその方法については言及しておらず、イタリアの統計局関係者はメディアに、地下経済の活動を計算することについて「そもそも違法だから報告されないのであって、算出は明らかに難しい」と語っている。地下経済をGDPに含めるのは結構だが、逆に経済指標の正当性を守れなくなるのでは、という指摘もある。
地下経済の規模は計り知れないほど大きい。OECD(経済協力開発機構)に加盟する国々の地下経済規模の平均は、GDPの18.3%と言われる。ドイツの労働研究機関(IZA)が発表した研究によれば、日本の地下経済の規模はGDPの11%ほどだ。例えば、私たちの生活のすぐそばにある援交や売春、違法薬物売買や違法賭博、闇金などがその対象に挙げられるだろう。おとなりの韓国は25%、中国は想像以上に少なく、12%ほどだという。
世界で最も地下経済の規模が大きいのは、ボリビアの66.1%で、グルジアの65.8%が続く(推定値)。地下経済を入れれば、統計算定のカラクリで経済規模の順位なども入れ替わるはずだ。EUを参考に、そんな算定方法が世界に広がる可能性もある。
先日、そんな“カラクリ”で一夜にして経済大国に躍り出た国があった。アフリカのナイジェリアだ。ナイジェリアはこの4月に1990年以降初めて、最新の経済統計を公表し、経済ランキングが世界26位まで上がった。それまで加算していなかったノリウッド(ナイジェリア内で発展している映画産業)や通信事業を含めたことでGDPがいきなり2倍になり、アフリカ最大の経済大国になったのだ。EUの動きによって、ナイジェリアのような現象が世界のあちこちで起きる日が来るかもしれない。
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