訪日外国人が1000万人を突破!――外国人の受け入れを考える世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる(2/2 ページ)

» 2014年06月23日 07時00分 公開
[川瀬太志,Business Media 誠]
誠ブログ
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移民をどう受け入れるか?

 話は変わりますが、日本では「政策的に移民を受け入れるかどうか」が議論されることがあります。その背景にあるのは、人口減少と少子高齢化が同時に進む中での労働力の不足や経済活力の減退に対する危機感です。

 移民政策を推奨している移民政策研究所の坂中英徳所長は「毎年20万人、50年間で1000万人の移民を受け入れるべき」(2014年5月16日外国特派員協会での記者会見)という持論を唱えています。

 また、坂中所長は移民を活用すべき分野として、次の産業をあげています。

  • 介護、福祉の分野
  • 農業、林業、漁業などの第一次産業分野
  • 建設の分野
  • 下請け中小製造業の分野

 坂中所長は、「これらの日本にとって重要な産業分野の働き手が減っている。だから移民政策で支えるしかない」と、訴えています。

 この移民政策は政府でも検討されていますが、国民の声として「治安が悪化する」とか、「日本の伝統文化が崩壊する」といったような、反論や心理的抵抗が大きいようです。

 確かに、移民政策を推進してきた西欧諸国では、「きつい(Kitsui)」「汚い(Kitanai)」「危険(Kiken)」、いわゆる“3Kの労働力”を確保する目的で多くの低賃金労働者を移民として受け入れてきました。しかし、今や移民の失業や生活保護、年金や多くの移民の子供の養育・就学費用など、社会福祉コストの増大が問題になっています。貧困層から抜け出せない移民が多く、治安の悪化や激しい暴動が多発していることから、これまでの移民政策の変更も検討されています。

 私が坂中所長の主張に違和感を持つのは、介護や農業、建設、下請製造業――、どの分野においても、日本の若者がやりたがらないようなちょっとキツイ仕事ばかりを外国の人にやってもらおうとしていることです。

 仕事がないという若者や健康な高齢者、子育てが終わった主婦など、まだまだ埋もれている労働力は日本にも存在します。

 3K仕事を外国の人に押し付ける前に、まず国内の余剰労働力の活用をやりつくす方が先ではないか、日本にとって重要な産業分野ならば日本人がやるべきではないか、と思うのです。

日本は、外国人を受け入れることにもっと慣れなければならない

 訪日外国人が1000万人を超えたとはいえ、国際的にみれば日本の外国人旅行者の数は世界で33位。首位のフランスは、8000万人を超えています。

「平成26年版 観光白書」(クリックして全てを表示 出典:国土交通省)

 アジアではシンガポールや韓国、インドネシアよりも下です。まだまだ日本は、観光国としては未熟なのです。

 「日本はほぼ同じ文化やお互いに近い価値観を持つ国民で形成されている」と考えている人が多い日本では、異なる文化や習慣を持つ外国人を受け入れる準備や覚悟がまだまだ足りていないように思います。

 移民の話の前にまず、より多くの外国の人に観光や短期留学、短期就労で日本に来てもらいましょう。そして、「将来は日本に移住したい」と思ってもらえるくらい日本を好きになってもらいましょう。そういう外国の人たちを受け入れる努力を、私たちはもっとしなければならないと思うのです。

 よく言われることですが、日本は外国人にとってまだまだ住みやすい街づくりができていません。言葉の問題もあります。街の案内板などもまだまだ不親切です。観光客が増えたとはいえ、多くは東京に集中しています。もっと日本の地方にも行ってもらわないといけません。

 観光客と移民の話は違うものだとは思いますが、私たち日本人は、外国の人たちが自然に街の中にいる風景にもっと慣れる必要があるのではないか、と思った次第です。(川瀬太志)

※この記事は、誠ブログ世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる:『訪日外国人1000万人突破! 外国人を受け入れるということを考える』〜日本人はもっと外国人を受け入れることに慣れなければならない〜より転載、編集しています。

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