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» 2014年06月27日 08時00分 公開

リクルートの最年少役員は何を考え、どんな仕事をしてきたのか上阪徹が探る、リクルートのリアル(5/6 ページ)

[上阪徹,Business Media 誠]

「じゃらん」の未来を説く

 入社6年目、本社に戻った。配属先は「じゃらん」。紙メディアからネットへのシフトが急速に求められていた。だが、紙メディアでの広告ビジネスに大成功したのが「じゃらん」。ネットへのシフトは、決してスムーズには進んでいなかった。背景にあったのは、ビジネスモデルが一変すること。広告収入から、カスタマーの宿泊代金の一部という成果課金へ。営業担当者にとって、目先の利益で言えば、どちらに力が入るかは明白。結果的に競合に水をあけられていた。出木場氏に委ねられたのは、「じゃらんnet」をいかに軌道に載せるか。だが、成功体験を積んだ社内の意識を変えるのは、簡単なことではなかった。

 「いろいろ言われましたね。『新しく来た、分かってないヤツに言われたくない』とか『松葉ガニと平家ガニの違いも分からないヤツにじゃらんはやれない』とか。でも、僕は言い返していましたから。『そんなものは知らないし、興味もないし、分かっていればインターネットビジネスがうまくいくわけではない』と。けっこう偉い人にも(笑)。そういうことじゃないじゃないですか。どっちが便利で、どっちが世の中に求められているか、です」

 ネットで簡単に宿泊先が予約できる時代、何を応援することがカスタマーやクライアントの利益になるのか。真正面から激突した。たとえ社内で嫌われようとも、譲ってはいけない、と思った。

 「カーセンサーの営業だった頃、カスタマーとクライアントをネットでつなげる新サービスが出たんです。参画するのに月1万円。当時のネットはまだ、PCに詳しい人がピーヒョロローって、モデムでつなげてた時代です。もちろん売れなかった。すると先輩が翌日、同行してくれましてね。社長に熱心に言うんです。『これからはネットの時代。あなたの判断が、この会社をつぶしかねませんよ』と。社長も半信半疑でしたが、受け入れてくれた。後にこの会社は競合より早くネット販売を始めて成功するんです。時代の流れは止められないんですよ。もし、先輩が押してくれなかったら、その会社の今はないかもしれない」

 「じゃらん」の未来を、出木場氏は社内に説いた。現在では「じゃらんnet」は予約宿泊人泊数が7100万人泊を超え、日本最大級の宿泊予約サイトとしての地位を確立している。

 「話せば分かってくれる、という確信が僕にはあります。ホットペッパービューティーのポイント予約も僕が言い出しっぺですが、異動して真っ先に部下に言われたのは、『じゃらんnetの予約でうまくいったかもしれませんが、美容室は違いますから』でした。『PCが美容室にあるのは約3割。オンライン予約ができるのは約3割だけ。予約管理なんかできない』と」

 出木場氏はこう説いた。では、30年後はどうなっていると思うか。相変わらず電話で予約を取るのか。では、10年後はどうか。5年後はどうなのか。

 「どの美容室もPCをそろえ、競合が出そろい、『じゃあリクルートもやるか』なんてのは、格好悪過ぎるわけです。ホットペッパービューティーがこの世界で一番を貫きたいなら、真っ先に未来を切り開かないと。美容室にPCを買う推奨をすることから始めるべきなんです。待ちの姿勢じゃなくて、オレたちが新しい価値を作るんだ、ネット予約できるような便利な社会にするんだ、というのが本来の仕事だろう、と。でも今では、そんな出来事があったなんて、誰も知らないほど予約は当たり前になってますけど」

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