パスファインダーズ社長。25年にわたる戦略・業務・ITコンサルティングの経験と実績を基に「空回りしない」業務改革/IT改革を支援。アビームコンサルティング、日本ユニシス、アーサー・D・リトル、松下電送出身。一橋大学経済学部卒。日本工業大学 専門職大学院(MOTコース)客員教授(2008年〜)。今季講座:「ビジネスモデル開発とリエンジニアリング」。
安倍政権が掲げる規制緩和策は、医療分野にまで及ぶ。特に“混合診療”に関する規制緩和は、当初日本医師会が反対しており、メディアでも「金持ちしかいい医療が受けられなくなる」「国民皆保険制度が崩壊する」「健康保険の質が下がる」など、さまざまな懸念や推測が報道された。
この規制緩和が“ややこしい”話になるのは、ビジネスを中心としたさまざまな思惑が絡むためだ。混合診療の何が問題になっており、実現するとどうなるのか――これを解説する前に、まず日本の医療における「混合診療」について説明しよう。
日本は「国民皆保険」制度を適用している国であり、健康保険対象の治療なら自己負担は原則で3割である(世代によって多少変わるが)。さらに、高額療養費制度(医療機関や薬局に支払うお金が一定額を超えると返金される制度)のおかげで、半年入院しても自己負担は50万円程度で済む。
一般的に治療は公的医療保険が適用される「保険診療」と、保険が適用されない「保険外診療」に分かれる(歯の治療で銀歯をかぶせるなら保険が適用されるが、金歯なら保険外となる)。この公的医療保険を使った診療と、保険外診療を併用することを混合診療と呼ぶ。
現状、日本では混合診療は原則的に認められていない(ガン治療などで一部例外はある)。保険が適用される診療を受けていても、治療の過程で保険適用が認められていない治療や投薬を一部でも受けると、すべての診療行為(検査〜入院〜手術〜投薬)が保険の適用から外れ、本来は保険診療となるはずだった治療まで、全額自己負担となる仕組みが採用されている。
混合診療の認可については、小泉政権時代から水面下で検討が続いてきたのだが、ついに政府は先般、混合診療の対象を拡大する法案を提出した。法案が通過すれば、2016年から「患者申出療養(仮称)」という新たな制度がスタートする予定だ。
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