あれほど騒がれた「お台場カジノ」の話がぷっつりと消えた理由窪田順生の時事日想(1/3 ページ)

» 2014年08月26日 08時09分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 こういう仕事をしている関係で、真偽不明の怪文書やら内部告発文書みたいものをよく送りつけられる。

 感情ムキ出しの個人攻撃から、にわかに信じられないような陰謀論的なものまで、いつも楽しく拝読させていただいているのだが、なかには思わず唸ってしまうほどクオリティの高いものがある。例えば、少し前に頂戴した「お台場カジノ」にまつわる怪文書なんかもそれにあたる。

 都政関係者を名乗る方からの告発で、「お台場カジノ」構想を掲げるフジテレビが、世界的カジノ企業・ラスベガスサンズやら鹿島建設と組んで水面下でさまざまな政治工作を進めているというもので、内容としてはまあ驚くほどの話ではないのだが、目をひいたのは添付されていた「お台場カジノ」のイメージ図だ。

都政関係者を名乗る方から「お台場カジノ」のイメージ図が送られてきた

 フジテレビ、鹿島建設、三井不動産、日本財団の4社が政府へ提案したIR建設候補地である「ダイバーシティ東京」から「船の博物館」のあたりに、スタジアムやエンタメ施設のようなものがギュッとした感じで建てられた様子は、安倍首相が視察をしたシンガポールのIR(カジノを含む複合リゾート)、マリーナベイサンズとワールドセントーサを足して2で割ったような印象だ。

 誰が描いたかは知らないが、「シンガポールのようにカジノで景気回復しましょう」なんて話をプレゼンしてまわるのはもってこいである。ただ、こんなイメージ図まで出回っていた「お台場カジノ」構想がここにきて急激にトーンダウンしている。永田町やらのIRを推進する人たちの間で、「大阪と沖縄が本命」なんて情報が飛び交っているのだ。

 IRが生み出す雇用・経済効果を考えれば、莫大な借金を抱える大阪や、基地という重い負担を強いられている沖縄の方が優先度が高いというのがその理由だが、ここまであからさまに「お台場」の名が落ちてしまった背景には、都知事の舛添要一さんが“慎重”な姿勢を貫いていることが大きい。

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