マツダの工場は「現場の課題」にどのように向き合っているのか工場潜入(前編)(2/4 ページ)

» 2014年10月17日 08時00分 公開
[青山祐介,Business Media 誠]

失敗大賞に値する挑戦

 2013年下期の「失敗大賞」工場長賞に選ばれたのは、本社工場第1車両製造部車両検査課の塗装検査工程に関するもの。クルマの塗装面にゴミが付いているかどうかを検査するこの工程では、蛍光灯の光を当てたボディの表面を検査員が図面で定められた手順に従ってチェックしなければいけない。

 ただ、CX-5以降、アテンザ、アクセラ、デミオと続くマツダのボディは、複雑な面で構成されるフォルムや輝度の高い塗装によって、塗装ゴミの発見が難しくなっている。そこで車両検査課のチームは、この検査工程を数値といった形で標準化することにした。これまで行ってきた検査員の目の位置を、ボディ表面の180カ所に渡って塗装面からの角度と距離として計測して記録し、マニュアル化しようとしたのだ。

人間の感覚で行われていた塗装ゴミの検査を、塗装面に対する検査員の眼の角度と距離を計測して数値化しようとした。これを1カ所につき4人でボディ全体で180カ所計測を行った

 計測は1カ所に付き、検査に従事する4人で測定するため、例えばボンネットだけでも測定には4時間を要したという。しかし、結局、作業は角度と距離という数値化はできたが、そのデータを作業者に見せても実際の作業をイメージすることは難しい、ということで実際の作業に生かされることはなかった。この取り組みが失敗大賞に値する挑戦として評価されたのである。もちろんこの失敗はその後、検査する目線を送る手順をボディに貼りつけて訓練ができる「目線訓練シート」や、検査員の動きを動画で撮影し、それをPCやiPadで比較して見られるようにするなど、別の形で標準化することに成功している。

検査する目線の順序と幅を記した透明なシートをボディに貼りつけて訓練する「目線訓練シート」
2013年下期「失敗大賞」工場長賞を受賞した、第1車両製造部車両検査課車体塗装検査係の(左から)佐藤華奈さん、齋藤有希さん、高岡康二さん
マスターとなる検査員の動きと訓練者の動きを同時に撮影して再生し、比較できるようにiPadとアプリを導入した(左)。また、検査員の目線そのものを記録するために、眼鏡にカメラを付けたものも使われた(右)

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