マツダの工場は「現場の課題」にどのように向き合っているのか工場潜入(前編)(3/4 ページ)

» 2014年10月17日 08時00分 公開
[青山祐介,Business Media 誠]

2013年下期の「失敗大賞」部長賞

 また、2013年下期の「失敗大賞」部長賞として選ばれたのは、「車体製造部の供給工程の改善」。ボディパネルを溶接して組み立てる工程で、パネル素材はコンテナに入れて牽引台車で現場に供給される。現場に到着した牽引台車からは、牽引車の運転員がコンテナを手で押して作業台に移動するのだが、従来は台車に登ってコンテナを直接手で押していた。台車にはローラーが付いているとはいえ、コンテナを押す重さは20kgf以上(kgf:1kgの重さの物体が受ける重力の大きさ)、さらに不安定な台車の上で押さなければならないという、作業者の負担が多い作業だった。

ボディパネルを溶接して組み立てるラインに、パネル部材の入ったコンテナを供給する牽引台車
牽引車を作業台に横付けすると、運転員が部材の入ったコンテナを押して作業台に乗せ、空のコンテナを引き出して回収する

 そこで、この作業を改善するためにこのコンテナを押し引きする重さをバネばかりで計測し、そこから目標となる理論値の重さを定め、そこに向かって改善策を講じることにした。そのひとつの方法がコンテナを直接押し引きするのではなく、台車にコンテナを押す台枠を設け、その枠を押すことで軽減させることにした。しかし、当初は10kgまで軽減することを目標としていたが、それを達成できなかったため、失敗大賞を受賞することとなったのだ。

 しかし、「失敗大賞」部長賞受賞後も作業負荷の軽減を追求。牽引台車の作業台に対する停止位置のズレが、コンテナが台車から作業台に移るときの抵抗となるため、牽引車にレーザーポインターを取り付けて停止位置の精度を上げたり、台車の上でコンテナが斜めになって動くことで抵抗が増えることを防ぐために、レールの左右にもローラーを設置するなどして、コンテナを押す重さは10.2kgfまで改善することができたという。

コンテナを直接押し引きするのではなく、この台枠に付いた取っ手を使うことで負担を減らすことができたが、目標値は達成できなかった
失敗大賞受賞後、牽引車にレーザーポインターを取り付けて停止位置の精度を上げ、レールの側面にもローラーを付けて抵抗を減らすなどして目標を達成した

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.