東京・品川の南側。海沿いの天王洲エリアには、頭文字に「T」と付いたビルがたくさん立ち並んでいる。これらはすべて、寺田倉庫のビルだ。
寺田倉庫は1950年創業、天王洲エリアで長年倉庫業を営んできた中堅企業である。最近では個人向け収納サービス「minikura」(参照リンク)を思い浮かべる人も多いだろう。本や洋服、CDなど預かってほしいものを段ボール箱に詰めて宅配便で送ると、月額200円〜/箱で保管してくれるサービスだ。必要になったら、いつでも箱を自宅に送ってもらえる。
箱を預かるだけでなく、箱の中のアイテムを一点ずつ寺田倉庫が写真撮影し、専用のWebページに登録してくれるのが「minikura MONO」(月額250円〜/箱)。ユーザーは専用ページにアクセスすればアイテムごとに管理でき、必要なアイテムだけを取り寄せたり戻したり、といったことができるのだ。寺田倉庫ではこれを「クラウド収納サービス」と呼んでいる。
さらにもう一歩進んで、minikura MONOで預けたものを、そのままヤフオク!に出品できるというサービスも提供している(2013年〜)。使わないものを預かってもらうだけでなくそのままオークションで販売できる、しかも面倒なアイテム撮影はすべて専属のカメラマンが代行してくれる……というのが便利だ。
寺田倉庫では最近minikuraを「プラットフォーム」と呼び、特にIT系のベンチャー企業と一緒に新しいサービスを提供する試みに取り組んでいる。例えば、ノイエジークと協業して近日提供予定なのが「airCloset(エアークローゼット)」(参照リンク)。自分の服のサイズや好みをオンライン上で登録しておけば、プロのスタイリストが選んだ服が専用ボックスで届くという、女性向けの月額制ファッションレンタルサービスだ。レンタルで気に入った服は自分のモノとして買い取ることもできる。
また、今年開催した「日本アカルミー賞 2014」では(参考記事)、スタートアップ企業や個人開発者を対象に、minikuraプラットフォームを活用したプランを公募した。優秀なプランには賞金として1000万円相当のバックアップを行い、共同でサービスを提供するというビジネスコンテストだった。本コンテストで優勝したVONOVOとのサービスも、2015年春にスタートする予定だ。
倉庫業の老舗が、なぜ自社サービスを「クラウド」「プラットフォーム」と呼び、ITベンチャー企業と組むに至ったのか? minikuraサービスの産みの親である、寺田倉庫執行役員の月森正憲氏に聞いた(以下敬称略)。
――ここに来るとき、天王洲駅の周りに御社のビルがたくさんあって驚きました。昔からこのあたりで個人向けに倉庫事業をしているのですか。
月森: はい、寺田倉庫は天王洲発祥の企業で、昔から倉庫事業をやっています。メーカーの物流やワイン輸入業者の通関・商品保管のお手伝いをするといったBtoBの事業のほか、個人向けにBtoCでモノを預かる、トランクルームの事業も長いです。もともとは地元・城南地区の富裕層の方が主なお客様で、ワインセラーや美術品、着物、ピアノといったモノを預かっていました。
BtoBはどうしても価格競争になってしまいやすく、大手物流企業には勝てないんですね。差別化のため、コンシューマ向けサービス(であるトランクルーム事業)を強化しようということで力を入れています。
――トランクルームサービスは珍しくないですが、minikuraのようにWebサービスとして展開しているのは珍しいですよね。
月森: トランクルームというのは、運営する会社が大きく2つに分けられます。一つは不動産系企業が提供するもの。ビルの中にトランクルームがあって、空室対策として行うものですね。もう一つが我々のような倉庫会社系のサービス。モノを管理するという点が強みです。食器、本、服……といったモノを箱単位でお預かりするわけですが、お客様から見ると「何を預けたか忘れてしまう」、人によっては「預けたことすら忘れてしまう」という課題がありました。
我々が物置代わりにそのままずっと預かっているのでは、お客様にとってよくない。「何を預けているか」をきちんと可視化しよう……ということで2012年に始まったのが、「minikura」です。minikuraのポイントは2つあって、一つがWebを使ってマイページで自分が預けたものが可視化できること、もう一つが使い勝手をシンプルにしようという点でした。特に料金体系ですね。これまでは「箱を一回動かすごとにいくら」など従量課金制だったのを、「箱1つあたり月額200円」とシンプルにしました。
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