メンタルヘルス対策サービス「こころの保健室」開始、USEN法改正に対応(2/2 ページ)

» 2015年02月06日 16時28分 公開
[ふじいりょう,Business Media 誠]
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まだまだ限られた企業の話

USENの田村公正社長

 坂元教授によると、うつ病の通院者は1996年の約43万3000人から約100万人へと増加。自殺者は1998年から2011年まで3万人を超えており、近年は減少傾向となっているものの、「働き盛りの40〜50代の自殺が多いし、20〜30代の自殺が増加している。タレントの自殺が報道されてから、急増するようなこともある」という。

 気分・感情障害の患者数をみると、2011年には96万人、このうち20〜50代は59万人と全体の61%を占めている。大手製薬会社の調査では、病院に通わない未治療患者や疾病(しっぺい)を疑われる人は、415〜470万人いると言われており、20〜50代の全人口6460万人のうち14人に1人という数字になる。坂元教授は「社員1000人の企業では、9人の患者と70人の疾病が疑われることになる。実態はもっと多くて、10人に1人はいるのではないか」と話す。

 企業にとって、従業員がうつ病を発症すると、人事・労務や産業医などの対応経費などに加えて、労働災害に認定される可能性を考慮すると数百万円単位の費用がかかる。さらに訴訟や自殺者が出た場合の社会信用の失墜がもたらす影響は計りしれない。こういった事態を避けるために、坂元教授は「多くの場合、患者は誰に相談すればいいのか分からないでいる。正しい知識を持つこと、部下の話を聞く時間を作ることが重要」と指摘する。

 オフィス・店舗向けの音楽放送サービスを展開しているUSENでは、「精神疾患の増加やストレス社会に何か貢献できないか」(田村公正社長)として、働く人のメンタルバランスに効果のある音楽BGMを流す「Sound Design for OFFICE」を2013年より提供。専門家が監修した85の音楽番組があり、声優の日高のり子さんを起用したノー残業デーの告知アナウンスが流れるチャンネルも用意されている。既にドワンゴ、エプソン、コクヨなどの企業や官庁が導入しており、「約5000件の問い合わせがある。職場の環境改善サービスへの需要が高まっている」(田村社長)という。

 しかし、労働安全衛生法の改正では従業員50人以上の職場に対して、ストレスチェックの義務化や医師による面接指導の実施が求められているが、適切な措置を実施しているのは「まだまだ限られた企業の話」(田村社長)というのが実情だ。

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