事業拡大に興味なし フレンチフライ専門店「AND THE FRIET」の強烈なこだわりとは?最高を追求(1/3 ページ)

» 2015年02月27日 15時12分 公開
[伏見学,Business Media 誠]

 「もしワールドカップのような世界選手権があるならば、そこで優勝するような最高のフレンチフライを作りたい」。

AND THE FRIETのフレンチフライ AND THE FRIETのフレンチフライ

 2013年12月、各国の駐日大使館が集まるエリアである東京・広尾にフレンチフライ専門店「AND THE FRIET」がオープンした。開業から1年以上経つ現在でもフライドポテトを買い求める客が長蛇の列をなし話題を呼んでいる。

 フライドポテトの専門店は、ベルギーやオランダをはじめ欧州には数多くあり、地元の人々や観光客が頻繁に利用するなど日常生活に根付いた存在となっている。一方、東京ではこうした専門店はまだ珍しく、AND THE FRIETのほかに、外苑前の「POMMEKE」(関連記事)や下北沢の「Robson Fries」など数店にすぎない。そうした状況もあって話題を喚起したのかもしれないが、AND THE FRIETはオープンにあたってほとんどプロモーション活動をしなかったそうだ。

 いわゆる広告宣伝という意味では、広尾駅にポスターを1枚貼っただけだという。では、オープンをどう告知したかといえば、目を引くデザインのWebサイトを立ち上げ、「最高のフレンチフライを作ります」と伝えたいメッセージを発信しただけ。それがソーシャルメディアを中心に口コミで広がっていったというわけである。

ヨーロッパで見た光景

 あまり知られていないが、AND THE FRIETを運営しているのは、クラブミュージックを専門としたKSRというインディーズ音楽レーベル会社。

 なぜ音楽レーベルがフライドポテトの事業を始めたのか。そもそものきっかけは、同社の小野澤健次社長が音源の買い付けなどでヨーロッパに足を運ぶ中で、フライドポテト専門店の魅力にひかれたことが大きい。

 ダンスミュージックの大規模な見本市のためにオランダを訪れると、街中には至るところにフライドポテトの専門店があった。ポテトが山積みになっていて、さまざまなディップを組み合わせて販売しているスタンドを小野澤氏はたくさん目にした。調べてみると、フライドポテトの発祥がベルギーということが分かり、ヨーロッパ出張のたびにベルギーへも行くようになったという。

 「元々、飲食事業にも着手したいと考えていたのと、自分たちは音楽を深く掘り、まだ世に知れていない良質の音楽を発掘、制作して新たな価値を提供したいという理念があった。食を通じても同様に一食材を専門的に掘り下げて提供したいと思い、世界中で食されているフレンチフライを選んだ」(小野澤氏)

 なお、当初、音楽レーベルが運営していることを公にしなかったのは、企画モノとして思い入れなくさっさと立ち上げたというような見方をされたくなかったからだ。「音楽レーベルが手掛けているということで、片手間な印象を与え、我々が本当にやりたいことを誤解されるのではという不安があった」と小野澤氏は振り返る。

 そして、構想段階から2年ほどの時をかけて準備し、2013年末にAND THE FRIETの開業にこぎつけた。数字は非公開としているが、オープンから現在までの業績は好調だという。今後はさらに店舗運営や商品開発などに力を注ぐべく、2015年2月1日付けで分社化し、「And The」という新会社がフレンチフライ専門店の事業を引き継ぐこととなった。

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