止めることはできなかったのか 女子プロレスで起きた“事件”赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)

» 2015年03月05日 08時26分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

真相は迷宮入り

 実際、女子プロレスでも過去に不穏ムードが漂う試合がいくつかあった。最も代表的なのは1987年7月18日に神奈川・大和車体工業体育館で行われたジャッキー佐藤VS. 神取しのぶ(現・神取忍)の一戦だろう。両者がクリーンに握手を交わしてからゴングが鳴らされたものの、佐藤との確執が生まれていた神取は「オラ、来いよ!」の挑発とともに容赦ないナックル攻撃を敢行し、柔道仕込みの寝技でねじ伏せて最後は腕がらみで完勝。異様なムードの中で完膚なきまでに叩きのめされた佐藤は顔を大きく腫らし、当時のプロレスマスコミの間でも「壮絶シュートマッチ」として取り上げられ騒ぎになった。

 後年、神取はミゾが深まっていた佐藤との当時の試合についてマッチメイクが成された時点で「どうしてもこういう内容(シュートマッチ)になってしまうけれど、それでもいいのか」と所属団体のジャパン女子プロレス側と相手の佐藤に再三に渡って確認を求めていたことを明かしている。だが、所属団体側は「それでもいい」とゴーサイン。そういう観点から考えると、この試合が成立してしまったことに関しては両者が犬猿の仲であった経緯を知りながら強行したマッチメーカーの姿勢に問題があったと言えそうだ。

 一方、男子プロレスの世界となると過去におけるケンカマッチ……もといシュートマッチのぼっ発事例は枚挙にいとまがない。しかし近年で思い出される衝撃度の大きい試合は、何と言っても1999年1月4日に新日本プロレスの東京ドーム大会で組まれた橋本真也VS. 小川直也の一戦だろう。当時の新日本でトップレスラーだった橋本が、世界格闘技連盟・UFO所属の小川にシュートマッチを仕掛けられ、パンチ、キック、関節技によって防戦一方となり、最後はエプロン際での強烈な蹴り上げによって無残にもKO(裁定は無効試合)されるという壮絶な内容だった。

 この試合は終了後のリングで両者のセコンド陣や所属レスラーたちが怒声を浴びせ合いながら繰り広げた大乱闘の模様も含め、その一部始終がテレビ朝日系列の『ワールドプロレスリング』で放送されたこともあって反響は大きかったが“なぜ起こってしまったのか”についてはプロレスメディアの間で今もほとんど触れられていない。関係者からは「UFOを率いていたアントニオ猪木がショーマンシップ路線に傾倒しつつあった当時の新日本プロレスに団体創始者として喝を入れようと考え『橋本にシュートマッチを仕掛けろ』と小川をけしかけた」との証言もあるが、事の真相は迷宮入りしたままである。

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